女性駅員がデジタル人材に転身 JR西、コロナ禍の“危機感”から始まった全社DXの舞台裏(5/5 ページ)

» 2025年12月03日 08時00分 公開
[仲奈々ITmedia]
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DX成功の鍵は「現場経験のある社員」

 変革実感率53%という成果を上げた同社だが、今後は70%を目標としている。宮尾氏は今後の課題について2つ挙げる。1つ目は組織間の差だ。「変革実感率を詳細に分析すると、ほとんどのメンバーが変化を実感している組織もあれば、そうでない組織もあり、まだまだ偏りがあるのが実態です。この偏りをなくし、全社レベルでDXを進めるのが、次の目標です」(宮尾氏)

 すでに、現場発の変革も生まれ始めている。駅員が自分たちの業務を改善するために、自らアプリを開発する事例も出てきた。こうした成功事例を他の現場にも広げていくことが、変革実感率70%達成に向けた鍵となる。

 もう一つの課題は、AI時代への対応だ。「AIにいかに対応できるかどうかが、変革実感率にも関わってくると考えています。そのために、生成AIに関する会社全体のリテラシーの底上げや、経営層へのインプット、必要な環境整備を進めていきます」(宮尾氏)

jr DX推進において、現場経験を持つ人材の存在とは? (提供:JR西日本)

 こうしたDX推進において、野世氏のように現場経験を持つ人材の存在は大きい。古橋氏は「現場経験のある社員は、業務や顧客に関する深い知識を持っています。その視点があるからこそ、本当に現場で使われるシステムやサービスを企画できるのです」と話す。

 一方で、DX部門での経験を積んだ人材が将来現場に戻れば、今度はそこでDX推進の担い手になれる。現場とDX、両方を経験することで、どちらの部門でも価値を発揮できる人材へと成長していくのだ。「現場も含めてどんどん挑戦し、変革を進めていく上では、こういった方々は非常に貴重な存在です」(古橋氏)

 現場を知り、DXを知る。そうした人材をいかに育て、活躍の場を広げていくか。JR西日本の事例は、全社的な変革を実現する上で、一つのヒントになるのではないだろうか。

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