リーダーが持つ言葉には、決してナンバー2が持てない重みがあります。この「言葉の力」こそが、リーダーというポジションに就いた人だけが手にできる「最高の武器」です。それは同時に、リーダーの言葉がメンバーたちの心の拠り所になることを意味します。
ところが、わが国のリーダーの言葉が、全てのメンバーの拠り所となるどころか、逆に不安と混乱を招く事態に陥ってしまいました。
12月1日、高市首相が自民党総裁就任時に発した、「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」が、「現代用語の基礎知識選 2025T&D保険グループ新語・流行語大賞」の年間大賞を受賞。選考した自由国民社は「午前3時の公邸入りはさらなる物議をかもし(中略)たが、一方で、共感した昭和世代も実は多かったのではないか。『仕事ってそういうものだったな』と」という表彰コメントを公式Webサイトに記しました。
SNS上では、ある経営者が「ワークライフバランスって言ってるやつで優秀なやつ1人も見た事がない」(原文ママ)という投稿をし、数時間で1200件以上の賛否両論コメントがつくなど大炎上。
やっと、本当にやっと、社員が体を壊すか精神を病むかのギリギリまで残業をして手に入れた「成果」を称える、愚かな経営者は消えたと思っていたのに。「過重労働を美徳化」するような言葉が大賞に選ばれ、日本に古くから根付く精神論の扉が、開いてしまったように思えてなりません。
むろん誰もが死ぬほど働いた経験はあるでしょうし、仕事に完全燃焼しなくては決して成し遂げられない事案が存在するのも事実です。
しかし、なぜ、子どもの具合が悪い時に休んだり、早退したりするときに、嫌な思いをする人が絶えないのか? なぜ、親の介護を職場のメンバーに言えない「隠れ介護」の中高年が増えているのか? なぜ、これだけネット環境が整っているのに、在宅勤務が自由にできないのか? なぜ、育児や介護などで休む人の穴を埋める社員が、理不尽な思いをしなければいけないなのか?
理由はシンプル。24時間365日会社のために働くことが、生産性を向上させるという間違った価値観がまるで亡霊のように生き残っているからです。そういう人たちは「忙しい自慢」が大好物。忙しい人=できる人と勘違いしているのです。
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