多くのミュージシャンとファンにコンサート会場として愛された東京都中野区の複合施設「中野サンプラザ」の取り壊しが、閉館から2年余りたっても一向に始まらない。建て替え計画が事業費の高騰などの影響で宙に浮いたためだ。立ち入り禁止のバリケードに囲まれながら、姿をとどめる区のランドマーク。一部区民は再利用を熱望するが行政サイドは否定的で、着地点は見えない。
JR中野駅北口を降りると、目の前に高さ約92メートルの中野サンプラザがそびえ立つ。開館は昭和48年。ホテルや結婚式場が入り、約2千席のホールはアイドルや歌手のコンサート会場として利用されるなど50年以上にわたって区内外の多くの来館者に親しまれてきた。老朽化などを理由に令和5年7月に閉館。最終公演をシンガーソングライターの山下達郎さんが務めたことが当時、話題を集めた。
中野区はかねて中野サンプラザの敷地を含む駅北口の再整備事業を計画しており、3年に複数の事業者グループの建て替えプランの中から、野村不動産が代表の案を選定。7千人程度が収容可能な多目的ホールを備えた住宅やオフィスの入る地上62階建ての複合施設をつくるプランで、6年度に解体を始め、11年度に新たな建物が完成する予定だった。
だが、折からの資材や人件費の高騰で、約2600億円と見込まれた事業費について野村不動産側は昨年秋、900億円以上増える見込みであることを区に伝達。同社側からは建築費を抑える案などが提示されたものの、紆余(うよ)曲折の末、今年3月、区は事業が成立するか明らかでないなどとして事業計画の見直しを発表した。
区は6月、同社側との協定を解除し、計画の白紙化が正式決定した。
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