近年の人員削減で特徴的なのが、従来の「早期退職者・希望退職者募集」という名称を使わなくなっていることだ。三菱電機の名称は「ネクストステージ支援制度特別措置」であり、9月29日に発表された三菱ケミカルグループの早期退職募集も「ネクストステージ支援プログラム」と名付けている。
その他、これまで発表された名称では「セカンドキャリア支援制度」(リコー)、「キャリアデザイン支援制度」(大和ハウス工業)、「セルフ・プロデュース支援制度」(富士通)、「ネクストキャリア支援希望退職制度」(フジテレビ)、「ライフシフト支援施策」(ダイドー)といった名前が並ぶ。
このように、早期退職者・希望退職者募集を「キャリア自律支援」や、「定年後の人生100年時代を見据えた前向きな生き方」だと礼賛するようなネーミングが多い。三菱電機も実施理由の中でこう述べている。
「人的資本経営を推進する当社では、重要施策として従業員のキャリアオーナーシップ強化にも取り組んでおり、人生100年時代に求められる従業員個々人の自律的なキャリア開発のための研修や支援制度を実行しています。今回、当社が大きな変革期にある中で、自らのキャリアを振り返り、新たなキャリアのステージへ進むことを企図した従業員に対するこれまでの貢献への感謝と、会社としての経営課題への対応の両面から、現在の支援制度を拡充した時限措置として、ネクストステージ支援制度特別措置を実施します」
人的資本経営とは、言うまでもなく人材の価値を最大限に引き出す経営だ。そのためには組織にキャリアを預けるのではなく、一人一人がキャリアを自分で考えるキャリアオーナーシップを持って、自らのビジネススキルを磨きながらキャリアを形成することが会社の持続的成長に貢献するとされている。
キャリア自律を促すために早期退職募集を実施することに、筆者は違和感を禁じ得ない。また、自律的なキャリア形成支援を謳うなら、本来、募集対象を全社員にすべきである。だが、多くの企業が中高年に限定し、20〜30代の若年層は対象にしていない。
こうした企業の一方で、人的資本経営を旗印に若年労働力の減少を補完するべく、40〜50代の中高年社員に対するキャリア開発やリスキリングなどによる再活性化と戦力化を図っている企業も少なくない。
例えば、大手エンジニアリング会社のカナデビア(旧日立造船)は2025年4月に定年年齢を60歳から65歳に延長。65歳から70歳まで再雇用制度の処遇も大幅に改善した。具体的には従来55歳、58歳でストップしていた昇格やベースアップを65歳まで継続。65歳以降の再雇用でも給与が下がることはなく、原則として65歳時点と同じ水準とした。
それだけではない。再雇用でも組織長として管理職を70歳まで継続できるようにしたのだ。その背景の一つとして「定年延長により『65歳までしっかりと雇用します』という安心感を与え、人材の採用や知見豊富なベテラン職員の能力を発揮してもらう」(同社人事担当者)ことにある。
そしてもう一つ、大きなコンセプトとして、年齢だけを理由にした処遇差を設けないことを前面に打ち出した。安定した雇用と年齢を理由とした処遇差を設けないという理念は、同社は終身雇用を標榜(ひょうぼう)しているといっても差し支えないだろう。
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