近年、黒字経営なのに人員削減を行う「黒字リストラ」が増加している。東京商工リサーチによると、11月末までで「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は42社。募集人数は1万2479人となり、2024年(1万9人)をすでに上回った。
42社のうち、直近決算期の最終損益(単体)が黒字の企業は28社で、募集企業の66.6%を占めている。従来は業績悪化による赤字企業の人員削減が主流だったが、今では黒字企業の人員削減が常態化している。
3000億円超の純利益(2025年3月期)があるパナソニックホールディングス(以下、パナソニックHD)は、「国内外1万人の人員を削減する」と公表。白物家電を手がける事業会社のパナソニックは、勤続5年以上の40〜59歳の社員および定年後再雇用社員を対象に、2026年3月期中に国内5000人の削減を実施する計画だ。連結売上高・営業利益ともに過去最高を更新している三菱電機も12月から希望退職者の募集を開始。対象者は53歳以上かつ、勤続3年以上が経過した社員および定年後再雇用社員だ。
現場では「リストラ」という言葉を使わず、「セカンドキャリア支援」「セルフ・プロデュース支援」といったキラキラネームが増えた。しかしその実態は、長年勤めてきた中高年層を削減し、組織の若返りを図るための人員削減である。
企業は黒字リストラを“前向きな施策”と押し出しているが、将来的には人材獲得競争で不利になる可能性がある。「業績が良くてもクビを切られるかもしれない」──従業員は、こんな思いを抱えながら、その会社に貢献しようと考えるだろうか。
黒字企業の人員削減が目立つようになったのは2019年頃から。2020〜2021年のコロナ禍は、旅行業や宿泊業など接客主体の産業の人員削減が多かったが、それ以降は黒字企業の募集が増加。2024年の早期退職募集企業も、黒字企業が6割を占めている。
社員の側に立てば「黒字なのに人員を削減するのはなぜ?」と、疑問を抱いても不思議ではない。しかも対象者は一般的には45歳以上、つまり勤続20年超のベテランであり、長年会社に貢献してきた社員である。
パナソニックHDの5月9日の発表では、黒字リストラは経営構造改革の一環としての「人員の適正化」であるとしている。どういうことか。同社と主要7子会社の国内社員数は約6万人であるが、うち50代以上が約48%を占めている。同社の人材・労務面の改革を担うCTROを兼務する玉置肇副社長は日本経済新聞でこう語っている。
「グループの年齢構成は50代以上の比率が高い。組織によっては3〜4年の間に3割以上の社員が定年を迎えてしまうところもある。国内では財務的に健全なうちに、5000人規模の仕事を無くすか効率的に置き換えなければ、パナソニックHDは10年後に青息吐息になってしまう」(日本経済新聞電子版、2025年10月29日)
つまり、社員の高齢化に伴う歪な人口構成の解消が目的だと言っている。
三菱電機も同じ趣旨だ。9月8日の発表では、実施理由として「『イノベーティブカンパニー』への変革を目指している」とし、「この変革実現に向けてビジネスモデルの変革や経営体質の強靭化を当社グループ全体で推進していますが、中長期的な企業価値の向上には、人員構成上の課題に対処し次世代への継承推進が必要と認識するに至りました」と述べている。
事業構造改革を進めている三菱電機だが、阿部恵成最高人事責任者(CHRO)は「柔軟に進めるには、明らかに高齢化が進んでいる現在の人員構成では難しい」と述べている(日本経済新聞電子版、2025年9月22日)。
三菱電機は53歳以上が全社員の4分の1を占めるが、「人の再配置を伴う事業変革を進めている。リスキリングや再配置だけでは間に合わない。短期施策として必要と判断した」と阿部氏。社員の高齢化を防止し、若返りを図るための人員削減であることが分かる。
ただし、社員の高齢化は大手企業特有の現象でもある。また、今回の対象となるボリュームゾーンのバブル期入社組と、その後の採用の抑制は会社の方針によるものだ。さらに「リスキリングや異動では間に合わない」という発言は、中高年社員の活性化による戦力化を断念したものと見なせる。
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