年間「30万時間」の業務削減 パーソルが非IT人材の生成AI活用を浸透させた3つのポイント人事が2カ月で目標設定プロンプトをリリース(2/2 ページ)

» 2026年01月09日 06時00分 公開
[やつづかえりITmedia]
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なぜ非IT人材も積極的にAI活用に取り組むのか

 山﨑さんは、IT部門などのサポートを得ることなく目標設定支援の生成AI用プロンプトを作成した。これを可能としたのが、グループAI・DX推進本部が提供する専用のツールや推進体制だ。

 パーソルグループでは社員が安心して使える専用環境として先述の「CHASSU」を開発し、2023年6月からグループ各社に展開してきた。CHASSUにはユーザーが自作のプロンプトを共有できるギャラリーがあり、同僚が作ったさまざまなプロンプトを参考にしたり、ダウンロードして活用したりできる。

 また、グループAI・DX推進本部が主導して頻繁に生成AIのセミナーや事例コンテストを開催するほか、活用に積極的な社員たちのラーニングコミュニティーも立ち上げた。コミュニティーには常時4000人ほどの社員が参加し、さらに突っ込んだ議論や先端的な活用のノウハウの共有が行われているという。

社員が作成したプロンプトが共有される「プロンプトギャラリー」から、累計1.6万回のダウンロードが行われている(PERSOL Technology Overview

 最近では、週に1回程度のペースで社内イベントが開かれている。例えばAIエージェント開発機能を学ぶ「未来を創る! 次世代のAIエージェント開発 CHASSU CRE8 超入門編イベント」には266人、社内の先進ユーザーから活用事例を聞く「PERSOLグループコラボ勉強会 ヘビーユーザーの達人、教えて!!」には237人が参加した。

 他にも生成AIにまつわる法務・セキュリティの勉強会に244人が参加するなど、日々の業務に生かすべく、能動的に学ぼうとする社員が多いことがうかがわれる。

年「30万時間」削減 トップダウンとボトムアップの両輪で活用推進

 社員が積極的に取り組む背景として、一つはトップダウンの方針がある。2023年5月に発表した中期経営計画(※3)では、「テクノロジードリブンの人材サービス企業」を掲げ、AI技術の積極活用による生産性向上と事業変革を目指す戦略が描かれている。グループAI・DX推進本部も、この方針のもとで2025年4月に発足した組織だ。

※3:パーソルホールディングス 中期経営計画2026

 一方で、同本部および前身の「グループデジタル変革推進本部」が、CHASSUのような社員向けの基盤開発や多数の研修、ラーニングコミュニティーの立ち上げなど地道な種まきを通じて、ボトムアップ型の生成AI活用の機運を醸成してきた。

 同本部 グループAI推進部 部長の鰐部(わにべ)直生さんは、「現場の業務の生産性を向上するというボトムアップの動きと、トップダウンの業務変革とを並行で進めてきたことが、良い結果につながっている」と語る。

 2025年3月時点でCHASSUの利用による業務時間の削減が推定30万時間/年に達するなど、この2年弱で業務への生成AI活用がかなり浸透し、社員のAIに対するリテラシーや感度が高まった。そのことが、AIによる業務変革や新たな価値の創造という大きな変化にも適合していく素地になっているという認識だ。

現場での「市民開発」を後押しする3つの要素

 パーソルグループの取り組みを見ると、非IT部門の社員が生成AIを当たり前に使える状態にするのに、次の3つの要素が寄与したと考えられる。一つは、CHASSUという安心して使える基盤の整備、2つ目が最初の一歩やさらなる活用を後押しする教育、3つ目がアーリーアダプター層を盛り上げることによる文化の醸成だ。

 世の中に生成AIが普及することで、「自分がやってきた仕事がなくなってしまうのではないか」「変化に取り残されてしまうのではないか」と不安を持つビジネスパーソンも多いだろう。パーソルグループでも、仕事のやり方が変わって戸惑う人はいるはずだ。しかし、初歩から教えてもらえ、積極的に試せる環境があることで、ただ変化に怯(おび)えるのではなく、変化を味方につけようというマインドを持てた社員が多いのではないだろうか。

 「情報通信白書 令和7年版」(総務省)によると、生成AIを「積極的に活用する方針」の企業は23.7%、「活用する領域を限定して利用する方針」の企業は26.0%にとどまり、合計で5割に満たない。

生成AIの活用方針策定状況(国別)(情報通信白書 令和7年版□情報通信白書令和7年版

 逆に一番多いのは、「方針を明確に定めていない」の31.8%である。これは、変化への適応に消極的である他、新技術の利用に伴うリスクへの恐れもあるだろう。

 リスクがあるのは確かだが、企業の消極的な姿勢は社員にも伝わり、生成AIから遠ざけることになる。積極的に活用を推進している企業との間で、事業変革はもちろん社員のスキルやマインドの面でも大きく差が開いていくことが予想される。

 なお、パーソルグループではAI利用のリスクにも目を向け、​​「パーソルグループAI基本方針」(※4)を策定するなど、AIガバナンス体制の構築にも力を入れている。このような攻めと守りの実践も参考に早期に方針を定め、必要な環境を整えていく必要があるだろう。

※4:パーソルグループAI基本方針

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