特に警鐘を鳴らしたいのは、言葉の使い方がもたらす影響についてだ。
「効率化」や「工夫」のことを、あえて「サボる」と表現する人がいる。「上手なサボり方」といったタイトルのビジネス書や記事も散見される。
おそらく「常識に縛られない」「要領がいい」といったニュアンスを出したいのだろう。あるいは、ちょっとした反骨精神の表れかもしれない。
しかし、この表現は少しばかりリスキーだ。「サボる」という言葉を使った瞬間、脳内では「義務を果たさなくていい」「報告しなくていい」という回路がつながりやすくなる。「手抜き」と混同されるかもしれないからだ。
また、周囲への影響も無視できない。
「あいつは上手にサボっている」と評価される職場があったとしよう。真面目に働いている人間はどう思うか。「真面目に報告・相談するのが馬鹿らしい」と感じるはずだ。
一方で「あいつは工夫を凝らして、生産性を上げている」と評価されればどうだろう。「自分も工夫してみよう」という前向きな空気が生まれるはずだ。
同じ結果であっても、どのような言葉で使うかによって、組織のカルチャーは天と地ほど変わる。だからこそ、上司は言葉の定義に敏感でなければならない。
部下が「適度にサボって、うまくやりました」と報告してきたら、こう訂正すべきだ。
「それはサボったんじゃない。業務プロセスを改善して、効率化したんだろ? 素晴らしい仕事だ」
逆に、単に報告義務を怠っているだけの部下が「タイパです」と言い訳をしてきたら、こう指摘すべきだ。
「それはタイパではない。手を抜いただけ。つまりサボりだ」
この線引きをあいまいにしてはいけない。
実際に高い成果を出し続けているハイパフォーマーたちは「前提」が違う。彼ら彼女らは決して「サボる」という言葉を使わない。
誰よりも「ラク」をしようとして、常に創意工夫をしている。自分だけのルールを決め、仕組みを作り、徹底的に合理化する。「やるべきこと(責任)」をストレスフリーに遂行するためだ。
ハイパフォーマーたちにとって、義務を果たすことは大前提だ。その上で、いかに権限(リソース)を活用し、労力を最小限に抑えるか。そのパズルを解くことに知恵を絞っている。
マネジャーの役割は、部下に「正しいラクの仕方」を教えることだ。
「サボるな! 汗をかけ!」と精神論を押し付けるのは時代遅れである。かといって「適度にサボっていいぞ」と発言すると、誤解されるだろう。
「たまに手を止めて、気分転換してもいい。だけど、任された責任は果たせ。報告義務は忘れるな。そのための工夫や相談なら、いくらでも応援する」
こう伝えるのが、仕事ができる上司の姿勢だ。誤解を招く表現はやめて、正々堂々と「効率化」を目指そう。そうすれば、部下も順当に成長していくだろう。
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