「プロンプト+補足」で生成AIの回答はガラリと変わる 言語学のスペシャリストが解説

» 2026年01月20日 08時00分 公開
[佐野大樹ITmedia]

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この記事は、佐野大樹氏の著書『生成AIスキルとしての言語学 誰もが「AIと話す」時代におけるヒトとテクノロジーをつなぐ言葉の入門書』(かんき出版、2024年)に、かんき出版による加筆と、ITmedia ビジネスオンラインによる編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。


 生成AIに指示したとき、回答がごちゃごちゃして見える場合は、質問内容に「補足」を入れると問題が解決するかもしれない。

 Googleで生成AIの開発に従事する言語学者の佐野大樹氏は、「プロンプトに指示の補足を入れることによって、生成AIの回答はより整理され、分析などがしやすくなる」という。佐野氏が執筆した『生成AIスキルとしての言語学』より、指示の補足の有無によって、生成AIの回答がどう変わるか解説する。

「プロンプト+補足」で生成AIの回答はガラリと変わる。写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

生成AIの回答はプロンプトの「補足」次第で精度が変わる

 指示や質問を補足することによって、生成AIがどのようなプロセスを経て、指示を実行するか、もしくは、質問に答えるのかが変わってきます。

 では早速、指示や質問に、詳細化、増補、拡張による補足をした場合と、しない場合とで、生成AIの回答がどのように違うのか、具体例とともに確認していきましょう。

 詳細化(指示や質問を言い換えたり、明確化したりする)の従属部によって主部の指示や質問を補足することで、生成AIが回答を作成する際に厳密に何を実行するかを誘導してあげることができます。

 プロンプトに、詳細化の従属部を含めない場合と、含める場合とで、生成AIの回答がどう変わるのかを見てみましょう。

 例として、ユーザーからのフィードバックを生成AIに分析してもらう場合を想定してプロンプトを書くことにします。

「補足なし」の場合の回答は……?

 まずは、従属部を含めない場合です。

プロンプト(1)フィードバックの分析(詳細化による補足なし)

#指示:次のユーザーフィードバックを分析してください

フィードバック:9月7日にA店で○○の電動歯ブラシを購入しました。しかし、残念ながら購入してすぐにバッテリーがなくなるようになり、現在は全く充電できなくなってしまいました。商品を新品と取り替えていただくことは可能でしょうか。

 このプロンプトに対して、生成AIは、フィードバックの要点を箇条書きにして回答を作成しました。

生成AIの回答

フィードバックを分析すると、以下のことが分かります。

  • ユーザーは、9月7日にA店で○○の電動歯ブラシを購入した。
  • 購入後すぐに、バッテリーがなくなるようになった。
  • 現在は全く充電できなくなってしまった。
  • 商品を新品と取り替えてほしいと考えている。

 このフィードバックから、ユーザーは商品に不具合があることを認識しており、新品と取り替えたいと思っていることが分かります。

 箇条書きにまとめてくれるのもいいのですが、ただ要点をまとめるだけでは、分析に必要な情報と不要な情報の両方が含まれてしまう場合もありますし、さらに、どの箇条書きが、何についての情報なのかを確認する必要も出てきます。

「補足あり」だと回答はどう変わる?

 そこで、ただ漠然と「分析してください」と伝えるだけでなく、詳細化の従属部を使って、指示を次のように具体化してみます。

プロンプト(2)フィードバックの分析(詳細化による補足あり)

#指示:次のユーザーフィードバックを分析してください

具体的には、(1)どの商品に対するフィードバックなのか、(2)ユーザーが指摘する問題点は何か、もし、(3)ユーザーからの要望がある場合は、それも特定してください。

フィードバック:9月7日にA店で○○の電動歯ブラシを購入しました。しかし、残念ながら購入してすぐにバッテリーがなくなるようになり、現在は全く充電できなくなってしまいました。商品を新品と取り替えていただくことは可能でしょうか。

 生成AIは、次のように回答しました。

生成AIの回答

(1)フィードバックは、○○の電動歯ブラシに対するものです。

(2)ユーザーが指摘する問題点は、バッテリーの寿命が短く、現在は全く充電できなくなってしまったことです。

(3)ユーザーからの要望は、商品を新品と取り替えてほしいということです。

 プロンプトに詳細化の従属部を追加したことで、今度は(1)(2)(3)と指示した通り、フィードバックの対象、問題点、ユーザーからの要望を抽出することができました。

 このように、詳細化の従属部で指示を補足することで、生成AIが厳密に何を実行して回答を作成するかを導いてあげることができます。

著者プロフィール:佐野大樹(さの・もとき)

Googleで生成AIの開発に従事するAnalytical Linguist。人工知能に言葉を教えるスペシャリスト。オーストラリア国立ウーロンゴン大学にて言語理論の研究で博士(Ph.D)取得後、国立国語研究所で『現代日本語書き言葉均衡コーパス』の構築に従事。プロジェクト終了後、情報通信研究機構ユニバーサルコミュニケーション研究所にて、災害時の問題-対応策ツイートのマッチングや含意データベースの開発を行う。2014年より現職。


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