CX Experts

「正論」で人は動かない 子どもの肥満率改善に挑むドバイ大型スーパーの「体験設計」、何がすごい?がっかりしないDX 小売業の新時代(2/3 ページ)

» 2026年02月06日 06時00分 公開
[郡司昇ITmedia]

教えるのではなく「させる」設計

 ここで行っているのは、栄養知識の講義ではありません。「選ぶ」「手を動かす」「達成する」「またやりたくなる」という、行動の連鎖を生んでいることが特徴です。

 行動変容につなげるには、3つの条件が必要です。

 第一に、意思決定の主体を本人にすることです。

 「親に言われたから食べる」では、習慣になりません。Bright Bitesでは、子どもが買い物の主役として設計されています。親は同伴しますが、子どもが選び、子どもが進める構造です。「自分で選んだ」という自己決定感を作りやすい設計になっています。

 第二に、良い選択が成功体験として記憶されることです。

 健康や栄養バランスの話は、正論で押すほど抵抗感が出るものです。Bright Bitesは、ランチボックスの設計、ゲーム、達成、報酬、ランキングといった要素で、選択を成功体験に変換します。仕組みとして、望ましい行動への即時フィードバックとその強化が組み込まれているのです。

 第三に、反復(継続)を起こす仕掛けがあることです。

 1回のイベントでは、行動は変わりません。変わるのは、反復が起きたときです。Bright Bitesではリーダーボードを使った競争の要素や、ステッカー収集など、継続を前提にした仕掛けが設計されています。

カルフール モール・オブ・ジ・エミレーツ入口から見えるBright Bitesキャラクター(2025年10月 筆者撮影)

事業としての継続性を無視しない

 Bright Bitesは店内を見て歩くだけなら無料ですが、ランチボックス作成、料理教室への参加などは少額の料金がかかります。

 食育を「良いことだから無料でやる」とすると、運営が続きません。続かない取り組みは、行動変容を起こせません。事業としての持続性が必要です。

 Bright Bitesは、入口の心理障壁は低く保ちつつ、価値のある体験は対価を取るという形で、継続運営の現実解を作っています。DXの文脈では、「PoCで終わらない構造」を先に入れていると言えます。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

SaaS最新情報 by ITセレクトPR
あなたにおすすめの記事PR