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10人で数億円を稼ぐ「タイニーチーム」の4条件 AIが“大企業の組織論”を壊す

» 2026年02月10日 07時00分 公開
[湯川鶴章、エクサウィザーズ AI新聞編集長]
ExaWizards

 AIツールの波は、まずはスタートアップの世界を席巻した。10人に満たない開発チームが数億円もの年間経常収益をあげ、旧来の資本集約型モデルを軽々と飛び越えていく姿を、私たちはここ2年ばかり立て続けに目撃してきた。

 彼らはTiny Team(タイニーチーム)と呼ばれ、AIツールを業務の深部まで溶け込ませることで、従来の組織論では想像しにくい規模と速度を実現している(【社員15人で売上60億円超 「AI×少人数」で稼ぐ“タイニーチーム”の衝撃】参照)。しかしこの現象は、本当にスタートアップという温室だけにとどまるのだろうか。実は大企業の内部でも、同じような小型の高速セルが育ち始めている。

米Microsoftや米JPMorganなどの大企業も、すでにTiny Team結成に向け動き始めた(写真提供:ゲッティイメージズ)

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学研が挑む"真のDX"──「本当に使われるデジタル」で目指す教育価値のバリューアップ

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Tiny Team成立の4条件 「ミーティングの極小化」に決め手アリ

 Tiny Teamは確かに新しいものの、成立条件は驚くほどシンプルだ。

 1つ目はAIツールを徹底的に使い倒すこと。コーディング、カスタマーサポート、膨大な調査業務まで、AIツールが実務の“底”を背負う。2つ目は マルチスキルを備えたゼネラリストが集まること。1人が企画と実装と顧客の声までを横断すれば、タスクの受け渡しという摩擦が消える。

 3つ目はチーム規模が10人以下ということ。小さいほどARR(年間経常収益)とFTE(フルタイム換算従業員数)の比率が跳ね上がり、成果が一人一人の背中にダイレクトに跳ね返る。最後の4つ目はミーティングを極小化する文化だ。同期的な口頭確認を最小限に抑え、非同期のチャットとAIが齟齬を埋める。これこそがスピードを損なわずに済む秘訣である。

エージェントの成熟が呼び込む“社内Tiny化”

 こうした小型セルを可能にしているのが、言うまでもなく自律型エージェントの進化だ。コードを書くAIがまず成熟し、続いてリサーチを一手に担うAIが実用域に達しつつある。

 トドメを刺すのが、ブラウザやデスクトップを操作する汎用エージェントだ。まだ発展途上とはいえ、米OpenAIが発表したChatGPT Agentは既に、社内のCRM(顧客関係管理)画面を自動で更新し、経費精算のフォームを埋めるところまできている。コーディング・リサーチ・ブラウザ操作――この3拍子がそろったとき、企業のあらゆるホワイトカラー業務が小さな自律セルへと分解可能になる。

Microsoft、JPMorgan すでに動き始めた大企業内Tiny Team

 こうした潮流は机上の空論ではない。例えば米Microsoftでは「Copilot Growth Pods」と呼ばれる極小セルがOutlookの新機能開発を担い、4人と20体のCopilotエージェントだけで、6週間掛かっていたリリースサイクルを10日に短縮した。ARRとFTEの比率は、従来の2.8倍に達したという。

 金融の雄、米JPMorganでも同様だ。「Deep Research Cell」と名付けられた2人のアナリストチームがGPT-4oを多段で駆動し、100ページ規模のレポート作成を3週間からわずか3日に短縮。レポートの品質スコアも1.3倍までに高まったと報告されている。

金融の雄、米JPMorganも同「Deep Research Cell」と名付けられた2人のアナリストチームがGPT-4oを多段で駆動(写真提供:ゲッティイメージズ)

フェーズごとに必要となるテクノロジーの層

 企業がTiny Teamを温室で育てるには段階がある。最初は安全なオンプレ環境でRAG(Retrieval Augmented Generation、検索拡張生成)と自動評価を回し、“PoC as a Service”(概念実証の量産体制化)として小さな実験を量産する段階。

 次に、複数エージェントを束ねるオーケストレータと権限ポリシーを備えたHybrid Cell(人間とAIが融合した実動ユニット)の段階が来る。ここを越えると、社内アプリの売買ができるマーケットプレースとFleet Manager(大量のAIエージェントを一括でコントロールする「司令塔」)を持つAIサブ組織が誕生し、自分たちで稼いだ内部ARRを再投資し始める。

 そして最後に、社内外の規制に即応するメタガバナンスAIが加わり、組織そのものがAI 駆動の複合体「AI Organization」へと姿を変えるのだと思われる。

具体的なアクション計画案?

 この変化を追い風にするか、向かい風にするか。アクション計画案としては、まずは90日間だけ全社横断ハッカソンを開き、AIツールを組み込んだミニプロダクトを3つ、本番環境にまで押し上げてみる。

 成功したセルのやり方をテンプレート化し、半年で5倍に増殖させる。2年後にはセル間で成果物を社内通貨で売買させ、5年後にはエージェント同士の交渉を監視するガバナンスレイヤーを敷く──こういう道筋で、AI組織へとトランスフォームできるのではないだろうか。

アクション計画案としては、まずは90日間だけ全社横断ハッカソンを開き、AIツールを組み込んだミニプロダクトを3つ、本番環境にまで押し上げてみる(写真提供:ゲッティイメージズ)

小さく産んで、AIで無限に拡張

 結局のところ、Tiny Teamの波はスタートアップだけの専売特許ではない。大企業の中にも確実に押し寄せ、PoCセルからHybrid Cell、AIサブ組織、そしてAI Organizationへと段階的に進化させていく。

 人間に残されるのは「問いを立て、AI同士を編成し、問題が起きれば方向修正する」役割だ。鍵を握るのはガバナンスとインセンティブ。それさえ整えれば、巨大企業であろうと、“小さく産んでAIで無限に拡張する”という新しい成長公式を手にできるのではないだろうか。

著者プロフィール

湯川鶴章

AIスタートアップのエクサウィザーズ AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。17年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(15年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(07年)、『ネットは新聞を殺すのか』(03年)などがある。


本記事は、エクサウィザーズが法人向けChatGPT「exaBase 生成AI」の利用者向けに提供しているAI新聞「大企業にも押し寄せるTiny Teamの波」(2025年7月22日掲載)を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集の上、転載したものです。

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【概要】学研グループは、DXを目的化するのではなく、現場と顧客にとって“本当に使われるデジタル”を出発点に教育価値のアップデートに挑戦しています。本講演では、現場で浮き彫りになった課題や、実際に行ってきた改善や仕組みづくり、そこで得られた知見がどのように学研のDX推進を形づくんできたのかをお伝えします。既存のデジタル活用の成果と学びを振り返りながら、学研が目指す“真のDX”の姿をご紹介します。

© エクサウィザーズ AI新聞

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