リテール大革命

「流行」を捨てたユニクロ、牛肉を“あまり売らない”スーパー 成功企業に共通する「前提を変える」思考法 がっかりしないDX 小売業の新時代(2/3 ページ)

» 2026年03月18日 09時00分 公開
[郡司昇ITmedia]

「全部そろえる」前提を捨てた 人口1万人程度の小商圏で成功したスーパー

 北海道にDZマート(運営元:ダイゼン、北海道鷹栖町)という小型ディスカウントスーパーがあります。売場面積約300坪、品ぞろえは約6000SKUに絞り込み、EDLP(毎日低価格)で運営し、道北・道東・空知エリアに出店を拡大しています。

 このスーパーの判断基準は「売り上げの大きさ」ではなく「少ない売り上げでも黒字になる構造かどうか」です。

 地域の消費実態に合わない商品は大胆にカットしています。北海道は牛肉生産量全国1位ですが、1人あたりの消費量は全国最下位水準。この事実を踏まえ、牛肉の品ぞろえを最小化しました。

 不要な商品群での先入れ先出しをやめるなど、作業項目を900から450へ半減し、営業中はわずか2人体制を実現。筆者が店を見に行った時も2人で店を回していました。

 欠品管理は本部が防犯カメラの静止画で遠隔チェックし、自動発注の精度を補完します。この結果、大手が出店を見送る人口1万人程度の小商圏でも黒字化が可能になりました。

DZmart(2024年5月筆者撮影)

ワークマンに見る「前提転換の成功」と「現象対応の失速」

 前提を変える企業。そして「売り上げ減」「人手不足」といった目の前で起きている「現象」に対応する解決策を打ち出す企業──この違いを同一企業の中で観察できるのが、ワークマンです。

 「作業服は職人しか買わない」という業界の常識を、ワークマンは変えました。作業服の機能性は、全ての人の日常に価値がある。この前提転換によって、判断基準は「職人の作業ニーズへの対応度」から「機能性ウェアとしての汎用的な価値」へ移行しました。

 新フォーマットとして生まれたカジュアル業態「ワークマンプラス」の打ち手は、これまでと全く異なるものになりました。路面店での作業服・用品は残しつつ、アウトドアやスポーツに特化した機能性商品を露出したり、ショッピングモールに出店したり──といった具合です。有名ブランドの半額以下という価格設定は、作業服のサプライチェーンで培った調達力がそのまま競争優位になりました。

 現在、ワークマンのチェーン全店売上高は1831億円(2025年3月期)、前年比4.5%増となり、「作業服チェーン」が「高機能・低価格カジュアル」へ土俵を変えたことで、もはや作業服業界だけの存在ではなくなりました。

ワークマンプラス2号店(2018年11月 筆者撮影)

 一方、ワークマンプラスの次に生まれた店舗フォーマット「ワークマン女子」が生まれたきっかけは「現象」でした。

 厨房用の滑りにくい靴が妊婦の間でSNS拡散されたりするなど、Instagramで「#ワークマン女子」というハッシュタグが自然発生的に広がりました。これにより女性客の来店比率が上がったのです。この現象を見て、女性に特化すればより深く刺さると判断し、店舗全体を女性向けに特化した店舗を作りました。

参考:「溶接の作業着」がキャンパーに爆売れ ワークマンが「エクセル研修」を強化して見えた新たなニーズとは

 開店当初は好調でしたが、結果として3つの構造的な問題が表面化しました。

 第一に「女子」という店名が商圏人口の半分を最初から排除してしまったこと。第二に、キャンプブームやSNS映えという現象に依存した集客が、ブーム沈静化とともに来店動機ごと消えたこと。第三に、ファッション性の高い女性向け商品がFCモデルの安定需要構造と矛盾し、在庫リスクと値引き処分が増加したこと。2024年3月期、ワークマン女子の既存店売上高は前年比11.1%減に落ち込みました。

参考:「女子」の看板を下ろしたワークマン 当面のライバルは「しまむら」? アウトドアブーム後の戦略

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