オープン化・標準化の価値について、福安氏は製品開発における「3層構造」を挙げて解説した。
最下層にあるのが「Shared Cost」(共有コスト)だ。これはボルトやナットのように、誰でも簡単に調達できる要素を指す。コモディティ化している部品や技術であり「開発コストが共有化されている」と捉えられる。
最上層が「Value」(価値)だ。企業の競争優位性になる固有の価値を指す。価値発揮につながるため企業が投資を決断しやすいレイヤーだ。
中間層が「Cost」(コスト)だ。この層は、最上層のValueを発揮するためのものだ。福安氏は、Cost層が最も重要だとしつつ、企業が進んで投資しない領域だと話した。いわゆる「コスト」と受け取られやすい層で、例えば「企業価値を生むソフトウェア(Value)を開発するための『基本ソフト』や『サーバ』」がそれに当たるという。
このCost層を、Shared Cost層にしようというのがオープン化を推進する考え方の根底にある。AIエージェントを例にすると、AIエージェントを使ったビジネスを展開したい企業は「データ構造が異なる」「セキュリティ要件が合わない」などの課題に直面し、それを解決するためにコストを払う必要がある。それらの要素がオープン化・標準化されれば、企業はValue層に注力できる。
当然、オープン化・標準化への投資はコスト負担の増加になり得る。しかし、MCPのようにオープン化して、利用者の支持を集めれば標準技術になる可能性がある。福安氏は、ある技術領域で自社ビジネスを伸ばすための戦略的投資と捉えるべきだという。
「グローバル標準として出来上がったものに合わせるのではなく、自分たちに有利な土俵を作る。そうすると、他社はその土俵の中でビジネスを作ることになります」(福安氏)
また、標準化はValue層を強化する効果もあるという。例えば、AIエージェントの性能向上に資する「高品質なデータ」を強みにする企業は、データ以外の領域――AIモデル、管理ツール、連携システムなどをオープン化できれば「データの価値が際立ちます。競争の領域をデータに集中でき、そこで勝負ができます」(福安氏)。
自社に有利な状況を作るため、オープン化・標準化に取り組む企業たち。では、日本企業の取り組みはどうか。Agentic AI Foundationのマジン・ギルバート氏(エグゼクティブディレクター)は、日本企業もオープン化・標準化の取り組みに参加・協力している点を評価しつつ「参加するタイミング」に一考の余地があるとした。
米国企業は、本番導入や商用化がまだ先の段階でも、オープン化・標準化の議論に早くから参加して、ルールの形成に関与しようとする傾向があるという。「日本企業は、まず技術を評価・導入し、その有効性や実用性を確認したうえで参加するケースが比較的多いように思います」(ギルバート氏)
「どちらのアプローチにも合理性があります。しかし、標準化活動に関しては、標準は一度決まるとその後のエコシステムに大きな影響を与えるため、早い段階から参加して議論に加わることには大きな価値があります」(ギルバート氏)
ただし、日本企業がオープン化・標準化の議論に参加するタイミングが早くなっているとギルバート氏は述べる。Agentic AI Foundationには、日立製作所などの日本企業が参画しており、今後増える予定だ。
ギルバート氏は「日本企業がグローバルなオープン技術コミュニティーの中で、利用者としてだけでなく、標準の策定に携わる貢献者として存在感を高めていく流れは、今後さらに加速していくでしょう」と見通しを示した。
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