現在公表している日本企業の事例を見ると、優秀な人材を正確に見抜くためというよりも、採用実務のボトルネックを解消する目的でAI面接を導入するケースが目立つ。
イトーヨーカ堂では、面接の日程調整にかかる工数や、面接官による評価のばらつきを課題として、新卒採用の一次選考をAI面接に置き換えた。アバターのAI面接官との対話によって、選考する方法だ。AIによる面接内容の要約も活用し、その後の学生とのコミュニケーションに人が時間を使えるようにしている。
大阪信用金庫も、新卒採用の一次面接にAI面接を導入している。日程調整なしで受験できるようにし、応募数を増やす狙いだ。面接官による評価のばらつきや、面接工数を減らす目的もある。AI面接で得た情報は、人間が実施する二次面接以降にも活用するとしている。
人材サービスを展開しているエン(東京都新宿区)では、AI面接を導入した採用で1人の候補者にかけていた時間で3〜4人ほど対応できるようになったという。大阪信用金庫の事例と同様に、AI面接で得た情報を、人間による面接での深掘りにも利用している。
このように、一次面接や日程調整、情報収集など「人がやると時間がかかる仕事」をAIに任せ、人はその後の工程に時間を使うケースが目立つ。
海外の導入事例を見てみよう。スイスの飲料メーカーであるネスレ S.A.では、対話型AIを使い、応募者のスクリーニングや面接の日程調整を自動化している。導入前は採用チームが日程調整などに大量の時間を費やしていたという。
米国では、応募受付や基本条件の確認、面接予約など、採用プロセスの前半をAIで自動化する事例も見られる。「人間の面接官をAIに置き換える」だけでなく、応募から面接までの採用プロセスそのものを自動化している。
AI面接の普及に伴い、規制も進んでいる。EUが2024年8月に施行した包括的なAI規制法「EU AI Act」(欧州AI規則)では、採用や候補者評価に使う一定のAIを「ハイリスク」として分類。企業側にリスク管理や記録保存、人間が判断を監督できる仕組みなどを求めている。
米ニューヨーク市にもAI活用を規制する条例がある。採用プロセスや昇進者の選考において、AIなどが意思決定をサポートする「自動雇用決定ツール」を使う場合、性別や人種、民族などで選考結果に偏りが出ていないかを第三者が検証する「バイアス監査」と、応募者への事前通知が必要だ。AIを禁止するのではなく「偏りを確認し、人が責任を持って使う」方向でルール整備が進んでいる。
「AIなりすまし面接」が現実に 求められる「構造化面接」と採用リテラシー
「持病は?」「子どもは?」 面接官が“聞いてはいけない質問”をする本当の問題Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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