日本人から見てみると、モンゴル社会は身を入れて働ける時間が少ないと言えるかもしれません。
モンゴルでは7月にナーダムという大きな祭りがあり、人々は地方に帰省します。7〜8月、なんとなくモンゴルの社会は動きません。12月になると忘年会シーズンになり、人々は浮かれてあまり仕事に身が入らない。年が明けると今度は旧正月がきて、やはり1カ月ほど社会は動かない。
モンゴルの社会は8カ月くらいで回っているような感じがします。社会全体がそれでよしという雰囲気があります。ワーク・ライフ・バランスという言葉を特に意識しているわけではなく、社会全体として家族との時間を大事にしているように思います。
──モンゴルの人々にとって、日本の企業や社会にどのようなギャップを感じるのでしょうか?
僕自身も半分モンゴル人みたいなところがあるので、実体験として感じるのは、日本人はやはり細かいですよね。100%完成してから何かを始めないと不安になるところがあると思います。
例えば、2021年に起きたみずほ銀行の大規模なATM障害のように、日本で銀行システムが止まると大きなニュースになります。一方、モンゴルでも銀行のシステムが止まることが時々あります。それでも「仕方ないな」と受け止める社会風土があります。
モンゴルでは、ある程度できた段階で「ベータ版」として社会実装して、実際に使ってもらいながら不具合が出たら直していく、という進め方が多く見られます。
日本では、社会実装する前にバグを徹底的に取り除こうとします。その分、時間がかかります。
これはICT産業の伸長にもつながる部分です。モンゴルには電子政府の仕組みがあり、さまざまな行政手続きがアプリケーション上でできます。
特に印象に残っているのが、コロナ禍のワクチン接種です。
日本では接種券を配るなどの準備をしている間に、モンゴルでは電子政府の仕組みを使って外国人も含めて接種できる体制が整い、3カ月ほどで全国民が接種できる状態になりました。
日本から見ると「そんなに早くやって大丈夫なの?」という不安もあると思います。でも、ある程度のところで始めて、実践の中で直していく。そのスピード感はモンゴルの良さだと思います。
──そのスピード感は、モンゴルのICT産業の成長にもつながっているのでしょうか?
それもあると思います。
若い人がモンゴルで「何か一発当てたい」と思ったとき、ITは手っ取り早いんです。
モンゴルの大きな産業の一つである鉱山は、既存の企業や事業者が大きな役割を担っているため新規参入は難しい。銀行も参入にはハードルがある。カシミア産業や食品製造なども、限られた国内市場において新規参入は容易ではありません。
そう考えると、ITでサービスを作って成功する方がチャンスがあります。
最近はフィンテックも盛んで、モンゴルで作ったサービスをキルギスやカザフスタンなど中央アジアに展開する企業もあります。米国や日本の企業が入りにくい地域を狙って事業を広げようとしているわけです。
モンゴル人はロシア語を話せる人も多いので、そうした地域に進出しやすい面もあります。
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