「3週間まとめて休む」「ルールは状況次第で変化」──モンゴル人女性が日本の職場で驚いた文化の違いとは?:【連載】ニッポンを「職場」に選んだら(1/2 ページ)

» 2026年10月09日 08時00分 公開
[濱川太一,ITmedia]

連載:ニッポンを「職場」に選んだら 海外出身者に聞く

 普段私たちが当たり前だと思っている仕事の進め方や職場の空気。でも、海を越えてやってきた同僚の目には、それがちょっと「不思議な光景」に映っている可能性も。日本で働く海外出身者の視点を通して、日本企業の「意外な横顔」をのぞき見ながら、これからの働き方について考えてみたい。


 「若い時から仕事と家族で生きてきたので、今度は自分が外の世界に飛び出したい、という気持ちが強かった」

 こう話すのは、モンゴルの首都ウランバートル出身のツァガーンバートル・ソロンゴさん(49)。現在、中古自動車の輸出を手掛けるビィ・フォアード(東京都港区)で、セールス部門のシニアマネージャーとして働いている。

 ソロンゴさんが来日したのは2015年、30代半ばの頃。仕事と育児に追われ、一度は母国で断念した大学院での学びを、今度は海外で挑戦してみたいと、息子を連れて来日。静岡県立大学大学院で経営学の修士課程を修めた後、2018年に同社に入社し、現在に至る。

 アニメや旅行を通じて日本の文化に親しんできたというソロンゴさん。一方で、日本の職場では、モンゴルとは異なるさまざまな文化やルール、仕事の進め方、さらには休暇の取り方まで、驚くことがたくさんあったと話す。

 モンゴルと日本、働き方にどのような違いがあるのだろうか。

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ビィ・フォアードでセールス部門のシニアマネージャーとして働いているソロンゴさん(同社提供、以下同)

「残りの人生を楽しみたい」 院進学で来日、日本企業に就職

 20代の頃、ソロンゴさんはモンゴル国立大学の修士課程で統計学を学んだ。

 知識を生かし、モンゴル国家統計局で国家公務員として働いたほか、建設や飲料事業などマルチビジネスを展開する民間企業の戦略プランニング部で、プロジェクトマネージャーとして働いた経験を持つ。

 仕事と家庭に専念する日々の中で、中途退学した大学院のことが心残りだった。

 「もう一度モンゴルで大学に入学することも考えましたが、せっかくなら海外に行きたいと思いました。息子も成長していたので、残りの人生ちょっと楽しく、みたいな感じです」

 30代半ばに差し掛かり「今動かなければ、さらに難しくなる」という危機感もあった。日本のほか、オーストラリアやニュージーランドなど複数の大学院の研究室に手紙を送り、学費面や教授とのやりとりなども踏まえ、静岡県立大学大学院経営情報イノベーション研究科への進学を決めた。毎日辞書をめくりながら、日本語を勉強したという。

 2018年、大学院の修了を控えていたソロンゴさんは、モンゴル人材を探しているという現職ビィ・フォアードの求人を知り、アルバイトとして働き始めた。約1年後には正社員に登用され、海外物流の部門に配属された。

 配属先でソロンゴさんが最初に担当したのは、車両を海外へ輸出するための書類作成や、船会社、現地の代理店などとの調整だった。必要な書類をそろえ、内容に不備があれば修正を依頼し、車両の出荷後には顧客へ書類を届ける。

 入社当時は分からないことだらけだった。

 「モンゴルには海がないので、海上輸送とかRORO船(車両が自走して船内に乗り込み運搬できる船舶)とか、私には本当に全く知らない世界でした」

 同僚や先輩社員に教えてもらいながら、一つずつ仕事を覚えていった。

日本とモンゴル ルールに対する考え方の違い

 入社して最初に驚いたことの一つが、職場での「あいさつ」だった。

 朝、出社すると同じ部署のメンバーだけでなく、他部署の社員にも「おはようございます」と声をかける。帰るときには「お疲れさまでした」「お先に失礼します」と伝え、廊下ですれ違った相手にも「お疲れさまです」とあいさつする。

 「これはビィ・フォアードのカルチャーですが、モンゴルでは別の部署の人にまであいさつはしていませんでした。今はこのあいさつの良さを実感していて、人間関係やお互いを尊敬し合うことにもつながっているのかなと思っています」

 ルールに対する考え方にも違いがあるという。

 日本企業では、決められたルールを守りながら仕事を進めることが重視される。ルールが変更されれば、その内容が社内ツールなどを通じて細かく共有される。

 「モンゴルの企業にもルールはもちろんありますが、状況によってルールの解釈が変わるんですよね」

 モンゴルで勤めていた企業では、スピードと結果を求められたとソロンゴさんは振り返る。仕事を止めず、まずは前に進めることを優先するため、業務上のルールに変更を加える場面もあったという。

 ルールに対する認識の違いとともに、ソロンゴさんは、日本企業が細部まで目を向ける点も印象的だったと話す。

 「『なぜ起きたのか』を何度も掘り下げて、ミスを防ぐ分析法(なぜなぜ分析)は海外でもよく知られています。そうした姿勢が、日本の品質の高さにもつながっているのだと思います」

 モンゴルでは、問題をある程度解決したら次の仕事に進むというスピード感がある。「仕事にはスピードと柔軟性も必要なので、両方を合わせていけばうまくいくんじゃないかと思っています」

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