現時点でPPIHは、トイザらスの業態転換について公表していない。売り場を変えるとしており、具体的には(1)IP強化(2)キダルト強化(3)非玩具の強化を掲げている。サンリオなどのキャラクター人気を背景に、ドン・キホーテではIP商品を拡充してきた。トイザらスでも同様にIPコーナーを増やすとみられる。
(2)の「キダルト」とは、大人(アダルト)と子ども(キッズ)を組み合わせた造語で、かつて子ども向けとされていた趣味に興じる大人を意味する。新生トイザらスでは、ミニカーやプラモデル、フィギュアなどのキダルト商品を増やすとしている。(3)では非玩具の例として駄菓子やコスメを挙げている。
日本玩具協会によると、玩具市場は過去5年間で8000億円台から1兆1000億円台に拡大した。ままごとや人形など、子ども向け商品は縮小した一方、トレーディングカードやプラモデルといった大人向け商品が伸びた。少子化を背景に、玩具店はキダルトへの対応が欠かせなくなっている。
現在のトイザらスは子ども向けやファミリー向けに特化しており、ゲームでも過激なタイトルは扱っていない。PPIHによる取得後は、ドンキの玩具コーナーに類似した商品構成になり、売り場も圧縮陳列が中心となるかもしれない。
都市部では、トイザらスは主に商業施設内に出店している。新生トイザらスが成功すれば、PPIHはモール内に強い業態を手に入れたことになる。
Olympicは、PPIH自社店舗への業態転換を進める計画だ。全てをドン・キホーテにするのではなく、食品スーパー「ロビン・フッド」への転換も並行して実施する。12月に実施予定の業態転換では、比較的規模の大きい2店舗をMEGAドンキに転換し、規模の小さい3店舗をロビン・フッドに切り替える。これにより、ロビン・フッドは初めて首都圏に進出することになる。
ロビン・フッドはPPIHが4月から展開している新業態で、現在は東海地方に5店舗しかない。ドン・キホーテならではの圧縮陳列を封印し、売り場は普通の食品スーパーのような構成だ。100円未満のおにぎりや300円台の弁当を販売し、安さを訴求している。ドンキのPB商品も取り扱う。
オープン特需の影響もあるが、旧ピアゴから転換した3店舗では、前年比で客数が約1.5倍、売上高が約1.8倍に拡大した。ドン・キホーテのブランド効果もあり、40代以下の比較的若い層が増えた。
ただし、ロビン・フッドの成否を判断するには、まだ早い。多店舗展開後や、少なくとも1年間経過した後の実績を見る必要がある。収益改善の効果が低ければ、Olympicの転換先はドン・キホーテが中心となるだろう。一方で成功すれば、主な転換先はロビン・フッドとなる。その場合、PPIHにとって進出地域の幅が広がることになり、同社は各地にある食品スーパーのM&Aを加速させるだろう。
今年のPPIHによるM&Aは、Olympicよりも知名度の高いトイザらスの方が注目度は高い。だがロビン・フッドの成否と今後のM&A戦略に関わるだけに、Olympicの方が重要なテーマであると筆者は考えている。
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
明暗分かれた「無印良品」と「ニトリ」 2社の差はどこで生まれたのか
「トイザらス」、おもちゃ市場「過去最高」でも倒産のワケ ドンキが買収、玩具店が生き残る道はあるか
ドンキの買収で復活できるか? 関東スーパーの雄「オリンピック」が凋落してしまった根本原因Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング