退職代行の需要は確実にあったが、その需要が増え続けるかどうかは見えにくかった。
そんな中で、事業者が一気に押し寄せたのである。似たようなサービスが並べば、価格で競うしかなくなる。帝国データバンクによれば、平均料金は約2万8000円から約2万7000円に下がった。大手の法律事務所も参入し、競争はさらに激しくなっている。
事業を広げようとすれば、法的にグレーな領域にも手を広げがちだ。2026年8月には業界大手の運営会社の前社長が、退職希望者を弁護士に有償で紹介したとして有罪判決を受けた。業界全体に向けられる目も厳しくなっている。
企業側の対応も変わってきた。東京商工リサーチの調査では、弁護士や労働組合以外の退職代行から連絡があっても「非弁行為が含まれる可能性があるため取り合わない」と答えた企業が30.4%あった。また、退職代行について「利用歴が分かった場合、採用しない」という企業も26.0%にのぼる。使えば不利になるかもしれないと知れば、気軽に頼む人は減るだろう。
退職代行の会社が存在すること自体は悪いことではない。ただ、会社の数が増え続けたり、マーケットが拡大し続けたりすることは考えづらい。4社に1社がサービス停止という数字は、膨らみすぎた市場が本来の大きさに戻っていく過程なのだろう。
ただ、退職代行の事業者が減ったからといって、職場が良くなったわけではない。
上司が怖くて退職を切り出せない人は今もいる。その人たちにとって、セーフティネットは必要であり続ける。事業者が減っても、追い詰められた人の需要が消えることはない。
また、転職市場が変わり、辞める人が減ったとしても安心はできない。辞めないことと、意欲的に働いていることは、全く別の話だからだ。
経営者やマネジャーが考えるべきは、退職代行の行く末ではない。コミュニケーションを相互にとり、いざとなったら部下が「辞めます」と自分の口で言える関係を、日ごろから築けているかどうかだ。
セーフティネットを必要としない職場づくりは、上司の仕事なのである。
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