なぜ一線を越えてしまうのか プルデンシャル生命、モームリ……不祥事を生む“歪んだ成功体験”のワナ働き方の見取り図(1/2 ページ)

» 2026年02月12日 07時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

 大手企業や新興企業、政治の世界、教育機関まで、不祥事が後を絶ちません。KDDIでは子会社の架空取引が発覚。プルデンシャル生命保険では、107名の社員・元社員が関与し、約31億円に上る金銭被害が生じた不適切行為が明らかになりました。

 メディアへの露出を増やし、急激に知名度を上げていた退職代行「モームリ」は、弁護士法違反の疑いで運営会社の社長が逮捕されました。東京大学でも収賄容疑で大学院教授たちが逮捕されています。

 他にも年明け早々には、浜岡原子力発電所を巡って中部電力のデータ不正が報じられました。また、福井県前知事のセクハラ問題では、LINEなどでみだらなメッセージが送られていた実態が明らかになっています。

 これらの不祥事を引き起こしたのは、社会の中で確固とした立場を築いたり存在感を示したりしてきた会社組織や、地位も名誉も得ている人たちです。

 人がうらやむような社会的立場を失うリスクを冒してまで、物事の分別がついているはずの人たちが不正行為に手を染め、時に何度も繰り返して抜け出せなくなってしまうのは一体なぜなのでしょうか。

 これは一部の「問題のある人」だけの話ではなく、意思決定を担う立場にある人であれば誰もが無縁ではありません。

photo01 相次ぐ不祥事は、権限と判断を持つ立場に内在するリスクを浮き彫りにしている(提供:ゲッティイメージズ)

著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)

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ワークスタイル研究家/しゅふJOB総研 研究顧問/4児の父・兼業主夫

愛知大学文学部卒業。雇用労働分野に20年以上携わり、人材サービス企業、業界専門誌『月刊人材ビジネス』他で事業責任者・経営企画・人事・広報部門等の役員・管理職を歴任。

所長として立ち上げた調査機関『しゅふJOB総研』では、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ5万人以上の声をレポート。

NHK「あさイチ」「クローズアップ現代」他メディア出演多数。


なぜ不祥事が起きるのか? 意思決定が歪むメカニズム

 不祥事を巡ってプルデンシャル生命保険が開いた記者会見にて、同社は「不適切な行為を行いやすく、不正を検知しづらいという問題がありました」と説明しました。確かに、1991年から100名以上も違反行為に携わっていたとなれば、組織体質が問われても不思議ではありません。 

 不祥事が起きると、同じ組織で働く大多数の真っ当な人たちも迷惑を被ることになります。自分たちまで不正に手を染めているかのように、世の中から見られてしまいかねません。

 しかし、悪意を持った個人が「見つからないように……」と注意しながら不正を行った場合、完全に防ぎきるのは難しいものがあります。会社は基本的に社員を信頼することを前提に仕事を任せているだけに、事細かに行動を監視したりはしませんし、監視を強めようにもプライバシーを考慮すると限界があります。

 一方、世の事例に目を向けると、中には組織が主導した不正もあります。保険金の不正請求を行っていた旧ビッグモーターのように、組織ぐるみと指摘されたケースや不適切会計のように経営陣など一部の関係者のみが行うケース、部署の中で複数人が関与しているハラスメント行為など、組織の規模感や影響範囲はさまざまです。

 ただ、単独犯であろうが組織主導であろうが、不正行為自体のメカニズムは基本的に変わりません。不正する意思が生まれ、その意思に沿って実行します。意思と実行が個人の中で完結していれば単独犯であり、組織主導であれば意思決定権者と実行者とが別々で、連携しているだけのことです。

 また、不正行為が繰り返される背景にも、個人・組織を問わず共通点があります。

 不正行為の意思が生まれる理由は大きく2つあります。まず、労せずして希望通りの結果が得られることです。業績不振の会社が好業績という結果を得たい場合、会計データを改ざんすれば形の上では実現できます。

 個人の場合も、出世する、収入を増やすといった結果を望むなら、不正に手を染めることで容易に手に入れられます。三菱UFJ銀行の元行員が貸金庫から金品を盗んだ事件では、金額にして17億円以上もの被害が生じました。不正な手段を用いることで、普通に働いていては到底得られない収入を得たことになります。

 もう一つの理由は、付随して副次的な利益がもたらされることです。粉飾決算をすれば、経営者は業績を良く見せるという結果が得られることに加えて、株主や銀行などから業績悪化の責任を追及されるストレスからも解放されます。さらには「モームリ」の社長が頻繁にメディアに登場していたように、優秀な経営者として称賛を受けるかもしれません。

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