冒頭で触れた通り、東京海上HDは株式分割に併せて、株主優待制度を設ける。2027年3月31日時点で、100株以上を3年以上継続保有している株主には、7500円相当の電子マネーなどを贈呈する。以降も保有を継続すれば、毎年2500円相当を受け取れる。
上場企業が株主優待を導入する主な目的は「導入時の株主数増加」「長期保有の促進による株価の安定化」「広告宣伝効果」などだ。東京海上HDも「より多くの株主の皆さまに中長期的に当社株式を保有いただくこと」が目的だと公表している。
近年、コスト削減などを目的に、株主優待を廃止または上場当初から導入しない潮流があった。しかし、足元では新たに導入する動きが広がっている。
コンサルティングを手掛ける野村インベスター・リレーションズ(東京都千代田区)の調査によると、株主優待を実施している上場企業の割合は、2019年9月の37.2%をピークに、2024年9月には33.3%まで低下した。しかし、2025年3月には35.0%に上昇し、導入企業数は増えている。
取引先やグループ会社同士で持ち合っていた株式「持合株」が減る中、新たな安定株主の確保を目的に、個人投資家にアピールする狙いもある。大手企業では、花王も株主優待を新設した。400株以上の保有者には6000円相当、1000株以上の保有者には1万円相当の化粧品または家庭品のセットを贈呈する。
株式分割や株主優待の新設は、主に個人投資家の獲得を狙った施策だ。新NISAの導入を通じて、国が「貯蓄から投資へ」の施策を推進する中、各社は投資のハードルを下げ、優待を設けることで自社株の購入を促している。
個別株や高収益をうたう投資信託など、個人投資家の選択肢は広く、企業にとって競争相手は多い。
日本株は2026年夏以降、成長が鈍化している。日経平均株価は現在、6万円台で推移している。キオクシアなど、AI特需に乗った銘柄の株価がピークアウトしたことに加え、コスト高を背景に減益に転じる企業が増えたことも要因だ。
株式分割には「高い株価の是正」という側面もあるため、今後、実施件数が減少する可能性が高い。一方、株価が下落または横ばいで推移する局面では、株主にアピールする狙いで株主優待を導入する企業が増えるかもしれない。
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
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