山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
東京海上ホールディングス(HD)は、10月1日を効力発生日として「1株を15株に分ける株式分割」を実施した。近年は1株を2〜5株に分割することが多く、15株への分割は異例だ。理論上、株主が保有する価値は変わらないが、1株当たりの額面は大幅に縮小することになる。
同社は併せて、上場以来初となる株主優待制度を導入した。株式を保有するメリットを高め、新たな投資家を呼び込む狙いだ。
本記事では、東京海上HDの施策を軸に、株式分割と株主優待導入の背景を解説する。
東京海上HDの株価は、9月末まで8000円前後で推移していた。1株を15株に分割したことで、10月以降は500円台で推移している。
株式分割とは、1株を複数の株式に分け、1株当たりの価格を引き下げることだ。例えば、1株1000円の銘柄の場合、2分の1の分割によって1株500円となる。株価は下がるものの、保有株数は2倍となる。保有する株式の総額は変わらないため、株式分割そのものによって株主の資産価値が増減するわけではない。
各社が株式分割を実施する理由は、主に「東京証券取引所(以下、東証)の推奨水準に合わせる」「投資のハードルを下げる」の2つだ。
東証は望ましい投資単位を「50万円未満」としている。しかし、日本株は米国株と異なり、原則として100株単位で売買する「単元株制度」があるため、最低投資金額が50万円を超える銘柄も多い。単元株制度を維持した上で、東証の水準に合わせることが各社による株式分割の狙いだ。東京海上HDも、株式分割によって最低投資金額を80万円前後から5万円台まで引き下げた。
投資のハードルを下げ、投資家を呼び込む狙いもある。株式分割を実施した企業の発表資料では「投資家層の拡大」や「流動性の向上」といった文言が使われることが多い。東京海上HDも「当社株式の投資単位当たりの金額を引き下げることにより、より投資しやすい環境を整え、投資家層の拡大を図ることを目的としております」と説明している。
日経平均株価はコロナ禍以降に急上昇し、2万円台から6万円台へと伸びた。2026年は一時7万円を超えた日もあった。こうした株価上昇を背景に、大手企業を中心に株式分割が相次いだ。非課税枠が拡大した2024年の新NISA導入も各社の株式分割に拍車をかけた。
株式分割の影響を除くと、東京海上HDの株価は2019年末と比べて約3倍に上昇している。同社は2022年にも、1株を3株にする株式分割を実施した。
2026年は特に株式分割が相次いでいる。10月1日を効力発生日として、東京海上HDの他、大和ハウス工業や日本ハム、三井住友フィナンシャルグループなど大物銘柄を中心に、50超もの企業が実施した。
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