2025年12月に発売した「Hetta!」は、開発に苦労した商品の一つだ。
近年は便利な中食や宅配サービスが増え、自分で料理をしなくても生活しやすくなった。それに加え、自炊は料理の盛り付けや洗い物の手間もあり、面倒に感じることが多い。
そこで開発チームは「フライパン」「皿」といった道具のカテゴリーを取り払い、料理を始めてから片付けを終えるまでの生活動線全体を見直した。そして考案したのが「お皿の形をしたフライパン」だった。
着脱式ハンドルのフライパンをそのまま食卓に出す商品はすでにあったが、同社はあくまで「皿として使えるものを作る」ことを目指したという。コンロで調理し、そのまま皿として食卓に置ければ、盛り付ける皿を別に用意する必要がなく、洗い物も減らせる。フライパンと鍋の境界だけでなく、「調理器具」と「食器」の境界を越えようとしたのである。
皿らしさを出すため、一般的なフッ素樹脂加工ではなくセラミックコーティングを採用。従来のセラミックコーティングには、フッ素樹脂加工に比べてこびりつきやすくなるのが早いという課題があったが、製造する工場が新たなコーティング技術を開発。皿らしい見た目と、フライパンとしての使い勝手を両立させられるようになり、量産化を進めた。
しかし、ここで思わぬ問題が起きた。一般的なフライパンの場合、内側と外側の塗装を分ける境目があり、製造時は先に内側のコーティングを施してから、外側の塗料を吹き付ける。しかし、「Hetta!」は五徳の上でずれにくくするため縁を巻き込んだ独特の形状にしており、この境目がない。そのため外側の塗料の一部が内側コーティングに重なり、使用するうちに外側の塗料が剥がれてしまうことが分かったのだ。
発売に向けて量産品が入荷したタイミングで判明したため、初回入荷した約3000個は全て廃棄。既に取引先から受注していた商品の納期にも影響し、キャンセルによる売り上げの損失も発生した。
伊東氏は「開発に費やした時間も大きな損失でした。担当者たちが、その時間に別の商品を開発できた可能性もありますから」と当時を振り返る。
最終的に外面塗料を変更したほか、本来なら自動化する吹き付け工程を、人の手で調整する方法で解決した。生産効率は落ちるが、品質を優先した。
そうして完成した商品は、当初の想定通り一人暮らしの生活者に購入されている。レビューでは「Hetta!」で袋ラーメンを作るなど、開発側が想定していなかった使い方もあり、そこからも新たな気付きを得ているという。
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