AI活用に全力を注いでいる自治体がある。江戸川区だ。職員向け生成AIツールはもちろん、窓口対応や災害対策にもAIを導入。同区は、年3万5000時間の業務削減の効果があったと試算している。
同区が行動を起こしたのは“生成AIブーム”前の2021年。そこから、AIの活用領域を広げてきた。「ツールやAIを渡せばそれで良いということではい」――江戸川区の渡辺良光課長(経営企画部DX推進課 課長)は、AI活用で成果を出すポイントについてこう話す。
江戸川区は、いかにAI活用を軌道に乗せているのか。2021年から2026年まで約5年間で蓄積した、AI活用の事例とノウハウについて渡辺氏が語った。
本記事はアイスマイリーが8月26〜27日に開催した「AI博覧会 Summer 2026」のセッション「AIで変える・変わる行政の現場〜江戸川区のAX取組事例」を基に構成。
江戸川区がAIを最初に導入したのは2021年4月。AIによる議事録作成から始まった。2022年1月には、児童相談所に相談支援のAIシステムを導入。その後、火災の煙を検出するAIシステムを取り入れるなど、AIの適用先を広げていった。
生成AIは、2023年7月に庁内での利用を開始。2024年2月には区公式Webサイトに生成AIを組み込んだ検索サービスを導入した。
2026年にはAI活用をさらに進める方針を明確にし、3月に生成AIツールを試験導入、4月に「江戸川区のAI活用に関する基本方針」を策定・公表した。基本方針では、AIを積極的に活用する一方で、区民への説明責任や導入時の透明性を確保する考え方を示している。渡辺氏は、同方針の位置付けを「本区におけるAI活用の憲法的な規定」と説明する。
職員向けには、既存の生成AI利用ルールや利活用ガイドラインを整理し直して「AI導入・活用ガイドライン」を策定した。具体的な利用方法については別途ルールを定めている。
江戸川区では、複数の生成AIツールを用途に応じて使い分けている。文書作成や要約、アイデア出しなどに活用しており、特定の業務に携わる職員を対象にしたツールもある。
AI導入の効果について、渡辺氏は生成AIの利用状況を基に試算した数字を紹介した。
研修を受けて生成AIを利用した職員は1271人。年間の削減時間は3万5494時間で、東京都の最低賃金を基準にすると約4351万円の削減効果に相当するという。ROI(投資収益率)は1136%と試算した。
渡辺氏は、生成AIによって仕事の進め方が変わってきたと話す。
「まずはAIにある程度ベースを考えてもらい、そこから職員が実情や考えを反映させて完成させていく。そうした仕事のやり方に変わってきた」
AIの効果は、時間削減にとどまらない。
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