自動車の「セグメント」とは何か? そのルーツを探る:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/6 ページ)
国内外のメーカーを問わず、自動車を分類ときに使う「セグメント」。そもそもこれが持つ意味や基準とは一体何なのだろうか――。
ボディサイズならどうか?
では、ボディサイズならどうかというと、これも当てにはならない。例えば、Dセグメントの現行マツダ・アテンザのセダンは、Eセグメントの現行メルセデス・ベンツEクラス(W212)とサイズがあまり変わらない。しかもこれが先代Eクラス(W211)との比較だとアテンザの方がだいぶ大きい。
アテンザ | 全長4865mm | 全幅1840mm | 全高1450mm |
---|---|---|---|
W212 | 全長4880mm | 全幅1855mm | 全高1455mm |
W211 | 全長4820mm | 全幅1820mm | 全高1430mm |
W212はアテンザを基準にすると、全長で15mm、全幅で15mm、全高で5mm大きい。W211の場合、全長でマイナス45mm、全幅でマイナス20mm、全高でマイナス20mmと、アテンザに比べてかなり小さい。
各セグメントは時代とともにどんどん大型化しているので、2、3世代もすればセグメントの大小が入れ替わってしまうことが多いのだ。wikipediaの「車格」という項を検索してもらうと、ご丁寧にセグメントがボディサイズで定義されているが、それに従うなら初代ゴルフはAセグメントだし、二代目ゴルフはBセグメントだ。三代目でかろうじてCセグメントに入ってくる。しかし、ゴルフはCセグメントというジャンルを確立したモデルで、言ってみればCセグメントのメートル原器だ。これでは具合が悪い。ボディサイズで定義するのも難しい。
エンジン排気量もダメ、ボディサイズもダメなら価格はどうだろうか。
再びベンツに登場願おう。EセグメントのEクラスの最廉価モデルは599万円。最高値モデルは1727万円である。フラッグシップでLセグメントのSクラスは最廉価モデルで1112万円。最高値は2600万円。SクラスよりEクラスの方が600万円も高いケースが出てきてしまう。これではどうにもならない。
というわけで、排気量、サイズ、価格など、何か1つの物理的なモノサシでセグメントを判断することは難しい。逆に言えば、そう簡単ではないからこそセグメントという別のモノサシを作り出さなくてはならなくなった。
関連記事
- 3つのエンジンから分析するエコカー戦線の現状
今やクルマもエコがブームだ。世の中の環境に対する配慮というのはもちろんだが、利用者にとっても燃費の良いクルマに乗るのは決して悪いことではない。今回は各種エンジン技術を軸にしたエコカーの現状を解説する。 - トヨタの戦略は正解なのか――今改めて80年代バブル&パイクカーを振り返る
トヨタを始め、今、世界の有力な自動車メーカー各社はモジュール化戦略と称し長期計画を進めている。しかし、合理化・最適化の先に、真の進化はあるのだろうか? 今回はそんな問題意識を端緒に、ある面白いクルマの話をしてみたい。 - 1年未満で3モデル! ダイハツがコペンを増やせる理由
ダイハツの軽オープンスポーツカー「コペン」が人気だ。2014年6月に新型を発表したばかりなのに、4月1日からは第3のモデルが予約開始。しかし本来、スポーツカーというのはそうたくさん売れるものではない。ダイハツが続々とラインアップを増やせる理由とは……? - 印象だけ高性能でも――自動車メーカーの罪深い「演出」
PCで細かい操作をするときは、マウスカーソルは動きすぎない方が都合がいい。同じようなことは自動車にもある。アクセル、ブレーキ、ステアリング……しかし市販車の中には、妙な味付けのものも。運転しづらいだけでなく、危険なこともある、と池田氏は指摘する。 - 「週刊モータージャーナル」バックナンバー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.