自動車の「セグメント」とは何か? そのルーツを探る:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/6 ページ)
国内外のメーカーを問わず、自動車を分類ときに使う「セグメント」。そもそもこれが持つ意味や基準とは一体何なのだろうか――。
セグメントができるまで
セグメントを定義するのは難しい。そういう意味では日本語の「車格」というネーミングは見事である。クルマには「格」のようなものがあって、それがクルマの序列になっていると考えると確かにそうなのだ。
1980年代前半あたりまでは、このセグメントに定義らしい定義はなかった。例えば、現在のCセグメントをトヨタは「カローラ・クラス」と呼び、日産は「サニー・クラス」と呼んでいた。これだと「カローラとサニーはライバルだから」という予備知識がないと比べられないし、それより何より、全メーカー間に横串を通して比較する役には立たない。
ヨーロッパでは、こうした分類がわりと早い時期からあり、例えば英国では、下からマイクロカー、シティカー、スーパーミニ、スモールファミリーカー、ラージファミリカー、コンパクトエグゼクティブカー、エグゼクティブカー、ラグジュアリーカーという具合に、用途に応じたクラス名がついていた。
しかし、これもモデルチェンジのたびにクルマが大型化し、役割が変わっていくという現実についていけなかった。例えば、30年前のシティーカー、つまりBセグメントは、後席はあくまでも補助席レベルで、実用的に人が乗るのは無理だった。そういう使い方をしたければCセグメントのスモールファミリーカーを選ばなくてはいけなかったのだ。だからネーミングもシティーカー、つまり都市内交通向け(都市間の移動には使わない近距離専用)自動車とされていたのだ。
ただ、今のヴィッツやフィット、デミオあたりのリアシートはある程度実用に耐えるし、走行性能で見ても高速道路に乗れないようなことはない。贅沢を言えばキリがないが、現実にファミリーカーとして使えるクルマになった。こういうセグメントの成長があるから、セグメント名に単語の意味合いが付加されると、実態と掛け離れる可能性が高まり望ましくない。
関連記事
- 3つのエンジンから分析するエコカー戦線の現状
今やクルマもエコがブームだ。世の中の環境に対する配慮というのはもちろんだが、利用者にとっても燃費の良いクルマに乗るのは決して悪いことではない。今回は各種エンジン技術を軸にしたエコカーの現状を解説する。 - トヨタの戦略は正解なのか――今改めて80年代バブル&パイクカーを振り返る
トヨタを始め、今、世界の有力な自動車メーカー各社はモジュール化戦略と称し長期計画を進めている。しかし、合理化・最適化の先に、真の進化はあるのだろうか? 今回はそんな問題意識を端緒に、ある面白いクルマの話をしてみたい。 - 1年未満で3モデル! ダイハツがコペンを増やせる理由
ダイハツの軽オープンスポーツカー「コペン」が人気だ。2014年6月に新型を発表したばかりなのに、4月1日からは第3のモデルが予約開始。しかし本来、スポーツカーというのはそうたくさん売れるものではない。ダイハツが続々とラインアップを増やせる理由とは……? - 印象だけ高性能でも――自動車メーカーの罪深い「演出」
PCで細かい操作をするときは、マウスカーソルは動きすぎない方が都合がいい。同じようなことは自動車にもある。アクセル、ブレーキ、ステアリング……しかし市販車の中には、妙な味付けのものも。運転しづらいだけでなく、危険なこともある、と池田氏は指摘する。 - 「週刊モータージャーナル」バックナンバー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.