甲子園を制した東海大相模と準Vの仙台育英――指揮官の指導法に迫る:赤坂8丁目発 スポーツ246(1/4 ページ)
夏の甲子園が終わった。ご存じのとおり、優勝は東海大相模、準優勝は仙台育英。メディアはさまざまな切り口で両校を取り上げているが、本コラムの筆者・臼北氏は両監督の指導法に注目した。
臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:
国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。
野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2013年第3回まで全大会)やサッカーW杯(1998年・フランス、2002年・日韓共催、2006年・ドイツ)、五輪(2004年アテネ、2008年北京)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。
感動をありがとう――。高校野球100年のメモリアルとなった第97回全国高校野球選手権大会を見た多くの人が、きっとそう思ったはずだ。
とにかく今年の夏の甲子園は注目選手が多かった。話題の中心は何と言っても早実(西東京)の怪物1年生・清宮幸太郎内野手だったが、関東一(東東京)のオコエ瑠偉外野手や九州国際大附属(福岡)の山本武白志内野手らプロ注目の3年生たちも負けないぐらいの素晴らしい活躍で聖地を大きく沸かせた。その中で決勝の檜舞台に立ち、最後にスポットライトを浴びたのは東海大相模(神奈川)の左腕エース・小笠原慎之介投手と仙台育英(宮城)の右腕エース・佐藤世那投手であった。
結果は小笠原に軍配が上がった。マウンドでは苦しい投球となりながらも6-6で迎えた9回に自らも驚く勝ち越しのソロアーチを右翼席へスタンドインさせ、9回9安打6失点で161球完投。粘投とバットでチームを45年ぶりのVへと導いた。
決勝戦で多くの人が心を打たれたであろうシーンは、この左腕エースが決勝弾を放ってダイヤモンドを一周し、ベンチに戻ってきた時だ。いつも厳格な門馬敬治監督が笑顔を浮かべながら出迎え、すぐに小笠原をギュッと抱き締めた。「雨が降るかと思いました」とは抱擁(ほうよう)された小笠原の言葉。確かにそれぐらい、珍しいことだった。
優勝監督インタビューでお立ち台に上がった門馬監督は小笠原を“ハグ”したことについて振られると「素直にずっと抱き締めてあげたかったです」。スタンドからは万雷のような拍手が沸き起こった。そして、その後に指揮官が目を潤ませながら口にしたのは次のコメントだった。
「今日は(現在の3年生がいるチームにとっての)最後のゲームだから、ボクも選手を全員褒めますよ」
滅多なことでは選手を褒めない鬼軍曹。門馬監督に東海大相模の選手たちは、そういうイメージを抱き続けている。だからこそ、このコメントを聞いた選手たちは誰もが心の底から喜んで感動した。
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