甲子園を制した東海大相模と準Vの仙台育英――指揮官の指導法に迫る:赤坂8丁目発 スポーツ246(2/4 ページ)
夏の甲子園が終わった。ご存じのとおり、優勝は東海大相模、準優勝は仙台育英。メディアはさまざまな切り口で両校を取り上げているが、本コラムの筆者・臼北氏は両監督の指導法に注目した。
あえて憎まれ役になる
練習でも試合でも門馬監督は、どちらかと言えば選手を叱咤(しった)することが多い。メディアに対しても今大会中、その時点でも十分に活躍していた小笠原と3年生右腕・吉田凌投手について問われると「あの2人はまだまだできるんじゃないですか。あのぐらいで満足してもらっては困る」。「よくがんばっている」という主旨のコメントを何とか引き出そうとしたメディアを閉口させたことがあった。
言うまでもないが、こういう厳しい姿勢を貫く門馬監督にはそれなりの理由がある。あくまでも基本的に選手を褒めるのは目標を達成した時。目標に向かってまい進している時は選手の気持ちを鼓舞し続けなければならない――。
これは昨年死去した原貢元同校野球部監督(巨人・原辰徳監督の実父)から受け継いだ教えだ。あえて憎まれ役になることを覚悟の上で門馬監督は東海大相模ナインの尻叩きを懸命に行ってきた。すべては夏の大会で「全国制覇」の栄冠をつかみ、選手とともに涙して喜びを勝ち取るため。だからこそ、お立ち台では目標を達成したことで、やっと全選手たちを褒めた。
しかし、そんな鬼軍曹のことを選手たちは誰一人として憎んでいない。実際、今大会中の小笠原は「自分が尊敬する人は監督です。ここにいるチームの全員が監督を絶対に胴上げしてやるんだと強く思っている」と何度も言っていた。しょっちゅうカミナリばかり落とされていたはずなのに、どこか暖かい。選手たちにとって、そういう“グラウンドの父”のような存在だった門馬監督は、まさに45年前の夏にチームを率いて全国制覇を成し遂げた原元監督の姿とだぶる。その門馬監督は優勝後に「オヤジさん(原元監督)もボクをちょっとほめてくれるはずだから」と語ったが、異論のある人などいるはずがあるまい。
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