甲子園を制した東海大相模と準Vの仙台育英――指揮官の指導法に迫る:赤坂8丁目発 スポーツ246(3/4 ページ)
夏の甲子園が終わった。ご存じのとおり、優勝は東海大相模、準優勝は仙台育英。メディアはさまざまな切り口で両校を取り上げているが、本コラムの筆者・臼北氏は両監督の指導法に注目した。
巧みな人心掌握術
その一方で東北勢初の全国制覇をあと一歩のところで逃した仙台育英の戦いぶりも、また見事だった。東海大相模との決勝ではエースの佐藤世那が10失点を喫し、139球の完投負け。だがエースとして今大会では680球を投げ、準Vに導いたことは賞賛に値するだろう。その佐藤を含め仙台育英の選手たちを巧みな人心掌握術でまとめ上げてきたのが、佐々木順一朗監督である。
厳格なイメージが強い東海大相模・門馬監督とは対照的に佐々木監督の指導法はかなり柔軟性に富んでいる。多くの高校球児が「丸刈り」にすることを当たり前としている中で、それをチーム方針として強制しないことを明言。他にも選手たちに「いつも接客が素晴らしい東京ディズニーリゾートのスタッフになり切って“おもてなしの心”を身につけるようにしなさい」とアドバイスし、一流プレーヤーを目指す前に人間性を高めさせようとするなどユニークなスキルアップ法を数多くチームに導入している。
ちなみに今大会の準決勝で仙台育英は、怪物1年生・清宮を擁(よう)する早実と対戦。7-0の完勝を果たしている。大注目のチームを相手に選手たちはいかにして飲み込まれずに平常心を保ち、勝利をつかむことができたのか。実はそこにもまた、佐々木監督の選手たちに対する巧みなメンタルコントロールが行き渡っていた。
19日の準決勝当日。球場入りする仙台育英のチームバスが甲子園付近にさしかかると、プレーボール2時間前の午前6時というのに周辺は溢れんばかりの人たちでごった返していた。バスの中からは「こんなすごい数の人たちの前でプレーするのか」「やっぱり清宮を見たくて、これだけの人が集まっているんだろうなあ」「完全アウェーになっちゃうんじゃないの」などと言った弱気な声が方々から上がった。それを聞いた佐々木監督はバスの中で立ち上がって、こう言ったという。
「いいか、お前たち。この人たちは、お前たちを応援しに来てくれているんだ。だから何も遠慮することなんかない。お前たちの力を存分に見せ付けてやれ。コテンパンにしてやれ。ボコボコにしていいぞ」
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