連載
自動車世界の中心であるCセグメント、しかし浮沈は激しい:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)
フォルクスワーゲンのゴルフが道を切り開いたCセグメントは、世界のメーカー各社がその後を追随し、今では自動車の中心的クラスになった。しかし、これから先はどうなるのだろうか……。
Cセグメントの立役者ゴルフ
初代ゴルフはジョルジェット・ジウジアーロが設計したコンパクトカーで、当時最先端にあったジアコーサ式横置きFF方式を有効に用い、キャビンの優れたパッケージ効率によって革命を起こした自動車史に残る一台だ。クルマのメカニズムをエンジンルームに集中させることで車室内へのメカニズムの侵入を最小限に止め、併せて搭乗者の背中を立てて座らせることで、小型車枠で大人4人を無理なく乗せられることを証明してみせたのだ。そのコロンブスの卵のようなアイデアはほぼ全ての自動車メーカーに右へならえをさせ、Cセグメントが成立したわけだ。
実は初代ゴルフは開発コストの制約から、グループ内の既存エンジンを使う以外に方法がなく、少々キャパシティ不足を承知で、現在でいうBセグメント用に開発したアウディのエンジンを使って仕立てられた。ゴルフにとって極めて幸運だったのは、発売前年の1973年10月に第4次中東戦争が勃発して、世界中をオイルショックが覆ったことだった。高効率パッケージと小排気量エンジンを搭載したゴルフは、まるでオイルショックを待っていたかのごとく翌年5月にマーケットに登場したのである。
以後、ゴルフはCセグメントのパイオニアとして、あるいは絶対王者として君臨することになった。ざっくりした言い方になるが初代は70年代、二代目は80年代、三代目は90年代、四代目は00年代前半、五代目は00年代後半を、それぞれカバーした。
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