インバウンドに沸く沖縄の小売業、しかし課題も:アジアから数千人が押し寄せる(1/2 ページ)
訪日外国人数が過去最高を記録し、インバウンド消費による好況が小売業界に到来している。特にアジア地域からの大型クルーズ客船が寄港する沖縄ではその勢いが強く、スーパーマーケット各社の業績も伸びている。しかし今後の課題も散見されるという。
「大型クルーズ船が毎日のように押し寄せてきて、国際通りや新都心はすっかりアジア人観光客だらけだよ」。
那覇市内で乗車したタクシーの運転手は苦笑いしながらこう話す。数年前から沖縄と東アジアの各都市を結ぶクルーズ客船の便数が増えているが、2015年に入り那覇港への寄港回数が大幅に増加。特に2015年7月末から8月初頭にかけては、台湾、香港、上海などから数千人規模の観光客を乗せた大型クルーズ客船が次々と入港した。クルーズ客船が到着してから数日間は街がアジアからの観光客で溢れ返り、至るところで中国語や韓国語が飛び交うことがもはや那覇の日常になっている。
記者が沖縄に滞在していた期間にもクルーズ客船の入港があったので、高級ブランドショップなどに大勢の観光客がバスで乗り付ける光景を何度も目にした。
円安や訪日ビザの発給要件緩和などを背景に、ここ数年で訪日外国人が急増している。日本政府観光局(JNTO)によると、2014年には過去最高の1341万4000人に上った。中でも急増し続ける中国人観光客がブランド品や家電などを大量に購入する“爆買い”は社会現象にまでなっている。こうしたインバウンド需要の恩恵を受けるべく、小売業を中心に積極的な訪日外国人の取り込み合戦が熱を帯びているのはよく知られたところであろう。
外国人客の対応強化で売り上げ増のスーパー
国内でも特にインバウンド需要に沸くのが上述の沖縄だ。2014年度の観光客数は716万9900人で過去最高。外国人観光客も過去最高の98万6000人に達し、前年比で35万8800人増(57.2%増)となった。台湾からの訪沖が最も多く、韓国、香港、中国本土と続いた。ただし航空路線の新規就航などによって、直近では中国本土からの観光客が急増しており、2015年7月には単月で初めて4万人を超えた。
インバウンド増に伴い、県内スーパーマーケットも業績を伸ばしている。流通大手イオンのグループ会社であるイオン琉球の2015年2月期決算は売上高691億1800万円(前期比2.2%増)、経常利益は10億9400万円(同3.9%増)と、それぞれ過去最高を更新した。2014年10月1日からの消費税免税制度の改正によって全店に免税カウンターを設置したほか、旅行会社と提携して外国人団体観光客を店舗に誘導する施策を打つなど、外国人客への対応を強化したことで売り上げを伸ばしている。
地元スーパー大手のサンエーも、2015年2月期決算は売上高1645億5300万円(前期比4.4%増)、経常利益131億7500万円(同17.2%増)と増収増益。同社の旗艦店であるGMS(総合スーパー)「那覇メインプレイス店」をはじめ免税対応店舗を拡大したことで外国人観光客の獲得に成功している。
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