最後の夜行急行「はまなす」廃止でどうなる?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)
JR北海道が札幌〜青森間を結ぶ夜行急行「はまなす」について、来年3月のダイヤ改正で廃止する方針を固めたという。北海道新幹線の開業や車両の老朽化など承前の事情がある。はまなすの乗車経験から、この列車の実用性を考えてみたい。
青函トンネルを締め出される夜行列車
北斗星やはまなす、そして3月に廃止された「トワイライトエクスプレス(大阪駅〜札幌駅)」(関連記事)は、それまでに廃止された寝台特急「北陸(上野駅〜金沢駅)」「あけぼの(上野駅〜秋田駅〜青森駅)」とは廃止の理由が異なる。北陸やあけぼのは利用客の減少と赤字運行が理由だった。株式会社としては見過ごせない事情である。
しかし、北斗星、はまなす、トワイライトエクスプレスは人気がある列車だった。廃止理由は青函トンネルの新幹線開業にある。新幹線が開業しても在来線規格の貨物列車は走行可能。しかし、新幹線が入り込むおかげで貨物列車のダイヤが動く。その結果、在来線旅客列車が締め出された。
客車の老朽化も損益計算の視点で重要となる。古い客車を使い回す分には黒字、あるいは少々の赤字。しかし新車を製造し、減価償却費を計上すると赤字転落必至となる。これを説明されると、新車を投入しても黒字になるという代案を示さないと存続できない。
そこでJRが導いた答えが「新車を導入し、相応の料金をいただき、青函トンネルを通らない夜行列車」だ。JR西日本は2017年からクルーズトレイン「トワイライトアクスプレス瑞風」を山陰山陽方面で運行予定。JR東日本も2017年から「トランスイート四季島」を東北方面で運行予定となっている。北斗星、トワイライトエクスプレスが持っている「夜行列車の旅の楽しさ」は、ちょっと贅沢な形で継承された。
先述したようにカシオペアも廃止される予定だ。こちらの寝台車は老朽化と呼ぶにはまだ早い。寝台車はクルーズトレインの仲間入りとなるだろう。既にJR東日本は「カシオペアクルーズ」というツアーで、この客車を使った東北行ツアーを実施している。
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