全国に大量発生の観光列車、ほとんどが「一代限り」か:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)
鉄道は巨大な装置産業だ。線路にも駅にも車両にもお金がかかる。だから設備投資は計画的に、慎重に取り組まなくてはいけない。それでもやむを得ず設備が余る。実は、各地で誕生する観光列車は、余剰設備を活用するアイデアだ。それだけに寿命は短いかもしれない。
改造観光列車、老朽化したら次はあるか
寝台特急の相次ぐ廃止など寂しいニュースもある。しかし観光列車は全国で増殖している。鉄道の旅を楽しむなら、現在はむしろ良い時代とも言える。或る列車はセレブ向けだけど、同じキハ40系を改造したJR四国の伊予灘ものがたりは乗車券とグリーン料金で乗車できる。車内では予約不要のカフェメニューもある。JR東日本のリゾートしらかみは快速列車扱いだから指定席だけで乗れる。どれも観光シーズンはチケットを取りにくいほど人気だ。
しかし、観光列車の隆盛がいつまで続くだろうか。約60種類の観光列車のうち、9割が改造車両だ。つまり、新製車両よりも寿命が短い。客室は美麗にリフォームしても、エンジンや車体が老朽化すれば廃車の運命だ。今後、10年間以上も維持できる列車は少ないと思われる。
もちろん成功すれば新たな設備投資は可能だ。JR東日本はリゾートしらかみの後継車両としてハイブリッドタイプの新型を導入した。しかし、現在の観光列車のほとんどは中古車改造だから採算が取れているのであって、新製車両を導入してまで黒字でいられるかという問題がある。それは老朽化で廃止になった寝台特急とまったく同じ問題だ。
いや観光列車の場合は違う。現在の車両が老朽化したころに、現在現役のディーゼルカーが中古になって、また改造できるかもしれない。それでも、改造の基になるディーゼルカーはそんなに多くないだろう。キハ40系は国鉄時代の設備投資ミスによって余剰となった。今回は触れなかったけど電車の改造例の多い「485系特急電車」は新幹線の開業によって余剰となった。そして今、JR各社の車両増備は計画的だ。国鉄時代のように早々には余らない。
そうなると、現在の観光列車の多くは「一代限り」になる可能性が高い。乗りたい列車があったら、早めに乗っておきたい。
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