デジタルとアナログを高次元で融合! カシオの腕時計が目指すモノづくり(5/7 ページ)
カシオの腕時計が躍進している。売り上げが伸びているが、開発現場ではどのようなこだわりがあるのか。デジタルドライブやアナログムーブメントの企画を担当している小島直氏と、プログラムの仕様設計を担当している長谷川幸佑氏に話を聞いた。
――動画で仕様を見せるというのは新しい発想ですね。プログラムは長谷川さん自身がつくっているのでしょうか。
長谷川氏: はい、プログラム自体はシンプルで簡単につくっています。この“動く仕様書”の恩恵は、「これはもっとこうしたほうがいい」「この動きはいらないのでは」という関係者の声に対して、すぐに修正してイメージを見せることができる点です。
この“動く仕様書”を元に打合せをする際など、「もっとこうしたほうがいい」という意見にその場でプログラムを修正して共有できるようにしなければいけません。あくまでこの“動く仕様書”は製品ではないので、ここに時間を掛けてはいけない。そこはつくり手の情報共有の手段、製品のレベルを高める手段として、「周囲に伝えられること」を最も重視してつくっています。
――この“動く仕様書”ができる前の仕様設計では、針の動きに関する仕様をどう表現していたのですか?
長谷川氏: 正直に言って、最初のころはとても難しかったです。「こういう表現にしたいんだ」と伝えたいと思っても、実際にそれが実現しないこともありました。感覚的なイメージを言葉で伝えて、なんとなくプログラムを書いて要望が叶えばいいのですが、開発が進んでいってしまうと、どこかのタイミングで「あ、これはイメージしていたものとちょっと違うな」と周りが思った瞬間に、その製品をボツにするリスクも。なので、あまり感覚的なイメージを仕様に盛り込むことができませんでした。ただ、この“動く仕様書”によって製品の完成形に近いイメージを開発の初期段階から共有することができるようになったので、より豊かな表現の開発に注力できるようになったと思います。
小島氏: 結局、以前はモックアップができて、ある程度まで製品設計が進むまでは製品の動きは分からなかったし、それができるまでは相当な時間を必要としていたのですが、“動く仕様書”ができたことによって企画担当者にとってもエンジニアにとってもイメージが分かりやすくなりました。実際、これまで針の動きを設計する際には“何分の1秒の速度で動く”という風に一定の速度で動くことを前提にしていたのですが、この“動く仕様書”によって針がゆるやかに減速したりする情緒的な表現も共有することができ、設計もしやすくなりました。
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