「ごぼうサラダ」を生み出したケンコーマヨネーズ、海外でもヒット商品の開発を:イスラム教徒も食べる(3/4 ページ)
業務用のドレッシング類やサラダ類を製造するケンコーマヨネーズが海外市場の開拓を加速させている。イスラム教徒向けにハラル認証のマヨネーズを販売したりと、現地ニーズに合わせた商品開発を進めているのだ。
インドネシアでは業務用よりも家庭用
現在、マヨネーズなど一部は家庭用として少量タイプの商品を販売しているものの、国内では引き続き業務用に注力していく。しかしながら、少子高齢化による消費市場の落ち込みは避けられないため、日本だけではなく他のメーカー企業と同様、ケンコーマヨネーズも海外市場の開拓に本腰を入れ始めている。
同社の海外進出は2005年5月、中国での合弁会社設立に始まる。広東省東莞にサラダ類やソース類の生産工場を建て、主に香港市場での新規顧客の獲得を目指した。なぜなら香港は中国内陸部とは異なり西洋化が進んでおり、サラダを食べる文化があったからだ。
数年後、次に上海に近い浙江省杭州にマヨネーズ・ドレッシング類の工場を立ち上げ、いよいよ中国内陸部の市場の拡大を進めていった。ところが、合弁先の関連会社にコンプライアンス上の問題が発覚したことで提携を解消、2015年6月に中国から撤退した。
現状ではアジア唯一の拠点となったインドネシアには、2012年7月に現地企業との合弁会社を設立した。インドネシアを選んだ理由は、将来成長が見込まれる東南アジアでも最も人口が多い点や、元々オランダ領だったことで西洋文化を受け入れやすい風土がある点などを村田氏は挙げる。インドネシアではマヨネーズ関連商品およびタマゴの液卵を生産、販売しているが、特徴的なのは業務用よりも家庭用の販売量が大きい点である。
家庭用で売れている代表的な商品がマヨネーズタイプ「おマヨ(omayo)」である。これはハラル認証を取得した商品だ。ハラルとはイスラム法で合法なものを意味する言葉で、ハラル認証を受けた商品というのは、イスラムが認定する適切な方法で作られたことが証明されているというわけである。なお、認証機関は日本国内だけでも複数あり、それぞれ基準がバラバラだったりするが、ケンコーマヨネーズはインドネシアの本場の厳しい認証機関から取得したものだと村田氏は胸を張る。
実際に認証を受けるにはさまざまな困難があった。例えば、アルコール成分を含むのはNGなので、原料はおろか、生産工場で従業員が使用する消毒用のアルコールも駄目だった。「その代わりに殺菌作用のあるものは何かを探した。あるいはマヨネーズなどに使われるお酢にもアルコール成分が入っているので、その代替を見つけるのも苦労だった」と村田氏は説明する。
そうした過程を経てハラル認証を得た結果、現地での売れ筋になっているという。また、その商品を日本に輸入して、日本に暮らすイスラム教徒や観光客に向けても提供するようになった。特に昨今のインバウンド増で日本に来るイスラム教徒も増えているのだという。
「インドネシアで培ったノウハウや実績を基に、今後は東南アジアの他国にも輸出を視野に入れている。ASEAN(東南アジア諸国連合)全体では6億人以上の人口がいる。市場は巨大だ」(村田氏)
関連記事
- なぜ中国で“甘いマヨネーズ”が売れたのか キユーピーの地道な作戦
中国で“甘いマヨネーズ”が売れていることをご存じだろうか。キユーピーが中国で展開を始めたのは1993年。当時の家庭に「マヨネーズ」はなかったが、どのようにして普及していったのだろうか。同社の広報部に聞いた。 - “あたらない”カキは作れるのか? オイスターバー最大手の挑戦
生ガキなどを提供するオイスターバーの市場が日本で急拡大しているのをご存じだろうか。過去5年間の平均成長率は11%を超える。そのけん引役として今年3月にマザーズ上場を果たしたのがヒューマンウェブだ。ただし、ここまでの道のりは決して楽なものではなかったという。 - バーモントカレーが、中国で売れている秘密
ハウス食品の看板商品「バーモントカレー」が、中国で売れている。中国では白いご飯の上にカレーをかけて食べる習慣がなかったのに、どのようにして普及させたのだろうか。同社・国際事業部の担当者に話を聞いたところ……。 - 世界で最も厳しいハラル認証取得の舞台裏
日本でも「ハラル認証を取得した」モノが増えているが、どのようにすれば取得できるのか。世界で最も厳しいと言われているJAKIMのハラルを取得したアクアグリーンテックに、話を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.