どう扱うか? 退職者が集めた「名刺」:仕事上の名刺は誰のもの?(3/5 ページ)
社員が在職中に受け取った「名刺」について退職時に返却を求める会社は多いが、現実には、その処理方法に悩むもの。個人情報の扱い方も含め、名刺管理の在り方をあらためて考えてみた。
機密保持に関する「誓約書」
名刺の管理方法がいい加減な場合、企業機密の漏えいをはじめ、不正競争のトラブルに巻き込まれるなど、会社にとって望ましくない事態が起こりかねません。
これを未然に防ぐには、退職予定の社員に対して、退職時までに機密保持に関する「誓約書」(図表2)を提出してもらう方法があります。その内容は「貸与したもの(情報)、会社として『戻すべきだ』と判断するもの(情報)は戻した」という誓約と、「勤務中に得た情報は退職者の自己判断で勝手に利用してはならない」という誓約を踏まえています。
もちろん、こうした誓約書があれば、個人情報の漏えいがまったくなくなるというわけではありません。しかし、漏えいした場合の責任の所在を示しているので、大きな抑止効果が期待できます。退職者の側も、いったん誓約書にサインをすれば、その名刺をもとに、同種のビジネスを安易に始めようとは思わないものです。
名刺の情報を、最初から転職先や起業で有効活用しようと考える社員は、退職前に名刺をより分け、必要なものをコピーやスキャンしているかもしれません。しかし誓約書を交わすことで、そのような行為も抑制できるでしょう。
退職者がかつて勤めた会社の名刺を有効活用し、それがもとでトラブルになったような場合、必ずといってよいほど、勤めた会社の情報管理の甘さが指摘されます。それは、退職者自身にとっても予想外の出来事かもしれません。
こうした無用なトラブルを避けるためにも、社会人のマナーとして、名刺の適正な管理・処分方法について社員に周知徹底しておきたいものです。
余談ですが、仕事のできるビジネスパーソンのなかには、在職中に受け取った全ての名刺をコピーし、それぞれの人物評などのコメントを添えてファイルとして返却して退職する人もいます。ただ名刺の束を置いて退職されるより、会社および後任者にとってはありがたい対応です。
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