持続可能な次世代都市の構築:スマートシティ最前線(2/4 ページ)
今後、新興国を中心に急速な都市化が想定されている。持続可能な都市の実現の鍵となるのは都市のインフラシステムであり、新興国でのスマートシティの建設の多くは、最新の技術を一括して活用することで大幅な後発者利益を享受できるであろう。本稿では最新のスマートシティの要素を基に議論を進める。
都市化の課題
都市化の結果としてインフラ、サービス、そして水とエネルギーをはじめとする資源に対する需要が拡大し、政府が対応することは一層難しいものとなっている。この問題は、多くの都市や国家において経済の不透明さが続いていることによる財政面の課題から、深刻さを増している。
しかし、デジタル技術の登場によって、政策立案者たちに都市化の課題によりうまく対応するためのツールがもたらされている。例えば米国では、公共サービスにデジタルインフラを導入し、エネルギーの漏出や全体的な消費量を減少させている。
スマートシティの利点
リーダーたちにとって、スマートシティへの取り組みを行うことには、経済発展の促進、クオリティ・オブ・ライフの向上、そして都市の環境をより持続可能なものとするという、3つの大きな利点がある。
経済の発展
スマートシティは有望なテクノロジー部門における経済規模を拡大させ、雇用創出により経済発展を促進させる。例えば、韓国の釜山市は釜山モバイルアプリケーションセンター(BMAC)を設立することにより、地域におけるソフトウェア開発分野の起業を振興している。BMACはモバイルアプリケーションの開発プラットフォーム、およびクラウドベースのサービスインフラであり、大学生や若い起業家を惹きつけるためのさまざまなインセンティブを組み合わせることで、3500人の雇用創出とモバイルアプリケーションに焦点を当てた新規事業300件の立ち上げを目標としている。
雇用創出により地域経済に才能ある人材を呼び込み続けることができ、市外の事業投資家にとって釜山市の魅力が増す好循環を生み出している。
クオリティ・オブ・ライフ
スマートシティはさまざまな形で市民の生活を向上させる。例えば、シンガポールは市全域を網羅するスマート交通網を開発した。これは移動している自動車の位置とスピードからクラウドソーシングを通じて交通データを収集・処理し、住民に公共テレビを通じてリアルタイムの交通データを提供している。また、シンガポール市は大規模な遠隔治療イニシアチブを実施している。これは人口の60%に相当するおよそ300万人の市民がデジタルメディアの遠隔相談システムを通じて医師の診断を受けることができるものである。
社会的な側面においては、政府は都市管理ツールを利用することでサービスをより効率よく展開することができる。例えば、自動制御能力を備えた市全域のモニタリングシステムにより、公共の場での不審な行動を監視し、犯罪を未然に防ぐことができる。このシステムにより、法律執行のためのリソースを効率よく割り当てることができ、犯罪の発生率を低下させることができる。
環境の持続可能性
スマートシティは水や電気などの資源の無駄を減らすための技術を取り入れている。家庭レベルでは、デジタル化により住民に対しリソースの消費量をより分かりやすくし、リソースを節約するために必要な情報を提供している。都市レベルでは、デジタルサービスにより、知能センサーなどの機能を通じてエネルギー消費量を需要に正確に合わせCO2排出量を削減することができる。
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