3Dプリンターが医療を変える、PEST分析から読む近未来(1/3 ページ)
IDC Japanによると、国内の3Dプリンター市場は2021年に1000億円を突破すると予想している。中でも期待されるのが、医療分野での利用。既に産業化されているのが、歯科用矯正機器の製造である。
著者プロフィール:竹林篤実(たけばやし・あつみ)
東大寺学園高校卒業、京都大学文学部卒業。印刷会社営業職、デザイン事務所ディレクター、広告代理店プランナーなどを経て、2004年にコミュニケーション研究所の代表。ブログ:「だから問題はコミュニケーションにあるんだよ」
2014年の国内3Dプリンターの出荷台数は、1万台弱で総売上は200億円強となった。これが2021年には国内市場は1000億円を突破すると予想されている(IDC Japan株式会社調べ)。ちなみに全世界で出荷された3Dプリンターは13万3000台であり、プリント素材や関連サービスを合わせた市場規模は、約4000億円となっている(米調査会社Canalys)。
そもそも3Dプリンターとは何か。プリンターと名が付いていることから分かるように、これは印刷機である。ただし、従来の印刷機が平面に印刷するものだったのに対して、3Dプリンターは3次元空間への印刷を行う。これにより立体物を造りだすの3Dプリンターである。
立体物を工業的につくる手段としては、これまでは金型による成形や切削加工が用いられてきた。こうしたやり方と比べて3Dプリンターのメリットは、造形の自由度と速さにある。このメリットが最も生きるのは、頻繁に型状を変えて検討することが必要な試作品製作と、1つ1つ微妙に形を変えたいカスタマイズ製品の場合だ。
3Dプリンターは第三次産業革命を引き起こす
第一次産業革命は、18世紀後半、英国において繊維工業の機械化によってもたらされた。第二次産業革命は、20世紀初め、米国におけるフォードの大量生産方式によって実現した。そして、第三次産業革命が、多品種少量生産を超える個人によるモノづくりによって起こる。そんな予想がある。
確かに、データさえあれば、3Dプリンターは三次元のオブジェクトを自由自在につくりだすことができる。実際、すでにさまざまなモノが3Dプリンターによってつくり出されている。米国では、銃弾を発射可能な拳銃がつくられて社会問題になったといえば、3Dプリンターの可能性を理解できるのではないだろうか。
プロシューマーが、3Dという生産手段を手に入れることにより、自らの好みに応じた製品を自由自在につくり出すことができるようになるのだ。しかも、つくった製品をインターネットを使えば世界中に発売することもできる。中国では3Dプリンターを使って住宅を建てたとのニュースもあった。3Dプリンターの可能性は非常に大きい。
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