あらゆる電子機器のプリント基板保護膜で躍進、太陽HD社長の「理・響・躍」(3/6 ページ)
「アイディール・リーダー」という新しい考え方を提唱する永井恒男氏が、電子機器のプリント基板の保護膜で成長している太陽ホールディングスの佐藤英志社長に話を聞いた。「非常識」に見えて極めて合理的な経営判断とは……。
請負体質からの脱却のためにとった「非常識」な手段
永井: しかし、それでも他社に先行されてしまったことがあったと聞きました。
佐藤: そうですね。例えばフレキシブル基板の分野では競合に先んじられました。実は話が複数箇所からあったにも関わらず、それが当時はどの製品で使われるものなのかを「嗅ぎ分ける」人材がいなかったんです。あるいは、それと気付いていても共有する文化やコミュニケーション能力が欠けていた。
でもいったん機会を取りこぼすと、後から必死に追いかけても「5年経ってシェアは何百、何十分の1」ってことになりかねない。そして、ある分野でシェアが9割だ、と安心していると、ある瞬間から市場の変化によって、実はたった1割に過ぎなかった、ということも起こりうる。だからまずこれは全社的に「感度」を上げないといけないと感じて動き始めました。
永井: 視野が狭くなると、シェアは逆に大きく見える、ということかもしれませんね。コーチングの際にも、多くの場合、クライアントの視野を広げる――「理・響・躍」の「躍」にあたる部分ですね――プロセスがあります。佐藤さんは視野を広げる=感度を上げるために、具体的にはどんなことを?
佐藤: これは他社さんでも例が出てきていますが、社員旅行を復活させたり、部署毎のレクリエーション制度に予算(2万円/年)を与えて推奨することにしました。これによって、コミュニケーションをよくすることはもちろんなんですが、芸術などに触れたり、高級レストランで一流のサービスを受け、おいしいものを食べたりすることが「感度」が上がることにつながったりするんです。だから「普通の居酒屋に行くなよ」って言ってます(笑)。
永井: 確かにちょっと特別な、普段とは違うおいしいものを食べると感度が上がります。コミュニケーション能力の向上も相まって一石二鳥ですね。
佐藤: 並行して社員食堂を一新しました。地元で取れる新鮮な食材を使い、一流ホテルで腕を振るっていた元シェフや、赤坂のレストランの料理人を招き1つ1つ手作りしています。社員はよく社食で飲み会をやってますね。
1953年創業の当社は、長い人だと社歴が30年を超える人もいます。それだけ長い年月同じ環境で仕事をしていると、意識せずとも考え方が固着してしまいがちです。例えば、工場を抱える事業所では根強い文化ですが、建物に入るときに上履きに履き替える。これをオフィスのリニューアルと同時に止めました。「泥だらけになります」って最初反対がすごかったんですよ。でも、実際そんなことはないし、いまではごく自然にみな受け入れています。レクリエーション、一新したオフィスや食堂と、そこでの食事などを通じて社員の感度を刺激し続ける、それが当社が競争を勝ち抜くために必要だったんです。
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