あらゆる電子機器のプリント基板保護膜で躍進、太陽HD社長の「理・響・躍」(4/6 ページ)
「アイディール・リーダー」という新しい考え方を提唱する永井恒男氏が、電子機器のプリント基板の保護膜で成長している太陽ホールディングスの佐藤英志社長に話を聞いた。「非常識」に見えて極めて合理的な経営判断とは……。
永井: 「感度を高めろ」と号令しても変わるものではありませんから、唐揚げ1つとっても実際に目にして、口にすることで少しずつ意識が変わっていくわけですね。ところで実際にクルマやスマホもバラバラにされているとか?
佐藤: はい。これも社員の猛反対にあいました。「社長、良いんですか? クルマ高いですよ」って。でも、それによってどのクルマにどのメーカーの基板が使われているのか、営業を戦略的に進めるための樹形図が描けるわけです。ハイブリッドカーではスペースの関係で、基板自体の面積は減っているものの、その分、集積のために半導体の利用度が高まっていることも分かった。研究開発をどこに注力すべきかも見えて来るわけです。クルマをバラバラにするのは一見乱暴で非常識に見えるかもしれないけれど、技術者がいろいろと推測に時間を使うよりも、ずっとコストパフォーマンスが高い。
永井: なんだか、警察の捜査みたい(笑)。しかし、まさに一見「非常識」なことを、佐藤さんは極めて合理的な判断で行っているわけですね。
佐藤: 当社は埼玉県の嵐山町という、決してアクセスが良いとは言えない場所にも事業所を構えているのですが、「太陽HDの飯はおいしいぞ」とご好評をいただいて、取引先にもわざわざ打ち合わせに訪れてもらえるようにもなりました。おいしいお店なら都心にたくさんありますが、この事業所の中でおいしいワイン、地ビールや地酒、そして食事まで一緒に楽しめるというのがバリューですね。
永井: 恩恵にあずかることができる社員の皆さんはラッキーですね。そして、それで契約が取れれば……。
佐藤: 営業担当がカタログを持って説明に行っても、なかなか購入先を変えてもらうのは難しい。特に自動車部品はスイッチングコストが高いので、当社の製品の優れた特性をどんなにアピールしてもそう簡単にはスイッチしてもらえないんです。だから往々にして値引きで関心を引くしかなくなっていきます。
そうではなくて、ホスピタリティを備えた――つまり遠方から訪れてもらう価値のあるようにオフィスや工場を整え、それを見てもらい、経営者同士も食事をし、話をすることで、先ずは信頼関係を築く。それでスタート地点に立てればよいですね。
永井: まさにわれわれが言うとところの「理」を実践されているわけですね。人間が信頼関係を構築するプロセスの本質にとても忠実に手を打たれている。
関連記事
- 先の見通せない時代、リーダーに必要な3つの要素とは
チームや組織を引っ張っていくリーダーの責任は増すばかり。悩めるリーダーに「アイディール・リーダー」という新しい考え方を提示しているのが、Ideal Leaders株式会社だ。代表取締役ファウンダーの永井氏にその取り組みを聞いた。 - 転職に成功する人、失敗する人――どこに“違い”があるのか
景気の影響を受けて、転職の求人数は右肩上がり。「自分もそろそろ……」と思っている人もいるだろうが、“転職で成功する人、失敗する人”にはどのような“違い”があるのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。 - なぜ給料が二極化するのか? 年収200万円と800万円の人
景気低迷の影響を受け、給料は下がり続けている――。そんなビジネスパーソンも少なくないだろう。では、今後10年間はどうなのか。リクルートで働き、中学校の校長を務めた藤原和博さんに「10年後の給料」を予測してもらった。 - どうすればいいのか? 年収300万円時代がやって来る
景気低迷などの影響を受け、会社員の給料が下がり続けている。低年収時代に会社員はどのように生きていけばいいのだろうか。この問題について、人事コンサルタントの城繁幸さんとフリーライターの赤木智弘さんが語り合った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.