2019年、東海道新幹線に大変革が訪れる:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/5 ページ)
JR東海は10月22日、東海道新幹線のN700A追加投入と700系の2019年引退を発表した。東海道新幹線の電車が最高時速285キロメートルのN700Aに統一されると、東海道新幹線に劇的な変化が起きる。それは「のぞみ」所要時間の短縮だけにはとどまらない。
こだまの加速力がカギになる
つまり、2019年に東海道新幹線のすべての列車がN700Aになる場合のメリットは、最高時速285キロメートルの車両に統一されるから、という理由よりも、最大加速度2.6キロメートル毎時毎秒の車両に統一されるからという理由のほうが大きい。歴代東海道新幹線の車両の加速度を振り返ると、0系は1.0キロメートル毎時毎秒。100系、300系、500系、700系は1.6キロメートル毎時毎秒。N700系とN700Aは2.6キロメートル毎時毎秒となる。
だから、最大起動加速度という数値で見れば、東海道新幹線は誕生から0系引退の1999年までの35年間が、「1.0キロメートル毎時毎秒」時代、それ以降、2019年までの20年間が「1.6キロメートル毎時毎秒」時代だ。そして2019年に第2の変革「2.6キロメートル毎時毎秒」時代が始まる。全列車の起動加速度が引き上げられ、曲線通過速度も向上する。これが大変革の決め手になる。
そして、起動加速度の向上で最もメリットを受ける列車はこだまだ。ひかりやのぞみの効果は小さい。なぜなら、起動加速度の効果は、停車駅が多く、速度ゼロからスタートする回数が多いほど大きくなるからだ。
こだまはとても過酷な宿命を持った列車だ。のぞみ、ひかりに追い越された後は、ただちに発車して後を追う。しかし、もう後ろから次ののぞみやひかりが迫っている。通過列車の合間に「サッと走ってキュッと停まる」という動作を、各駅停車で実行している。こだまが遅ければ、後続の通過列車が追いついてしまう。そうなる前に、待避設備のある駅に逃げ込まなくてはいけない。
東海道新幹線のように、高速かつ運行頻度の高い路線では、各駅停車の加速力アップが重要である。これはJR在来線や大手私鉄の通勤路線も同じだ。例えば、阪神電鉄には「ジェットカー」と呼ばれる電車がある。プロペラ機に対してジェット機に例えられる速さという意味だ。いかにも速そうなイメージで、特急電車用だと思うかもしれない。しかし、この愛称は同社の各駅停車専用電車に受け継がれている。路線全体の列車の速度を上げるなら、加速度に優れた各駅停車用電車が必要だ。
東海道新幹線の全列車がN700Aになる。と、いうことは、すべてのこだまの起動加速度が上がる。従って、2019年、東海道新幹線のダイヤ改正は今までよりも大規模になるだろう。
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