2019年、東海道新幹線に大変革が訪れる:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)
JR東海は10月22日、東海道新幹線のN700A追加投入と700系の2019年引退を発表した。東海道新幹線の電車が最高時速285キロメートルのN700Aに統一されると、東海道新幹線に劇的な変化が起きる。それは「のぞみ」所要時間の短縮だけにはとどまらない。
既に全車が時速285キロメートル対応だが……
東海道新幹線で最高時速285キロメートルが解禁となった。スピードアップしたのぞみは早朝深夜の8本と毎時1本。いずれも車両はN700Aだ。ところが、前述のように、700系も最高時速285キロメートルで走行可能だ。つまり、現在、既に東海道新幹線の車両はすべて最高時速285キロメートルに対応している。なぜ、今、すべてののぞみが最高時速285キロメートルに統一されないのか。
その理由は2つある。1つは、N700Aと700系は、同じ時速285キロメートルでも質が違う。どちらも比較的直線的な区間で時速285キロメートルを達成できる。ただし、N700Aは車体傾斜システムを採用し、曲線区間でもスピードアップできる。700系はできない。つまり、最高時速は同じでも、曲線通過速度に違いがある。
もう1つは冒頭で紹介した「加速性能の違い」だ。加速性能は鉄道技術用語では「起動加速度」と呼び、1秒あたり上昇する速度で表す。単位は「km/h/s」。日本語では「キロメートル毎時毎秒」と記述する。1キロメートル毎時毎秒は、1秒ごとに時速が1キロ上昇する。これは時速100キロメートルに達するまでに100秒かかるという意味になる。
700系の最大起動加速度は1.6キロメートル毎時毎秒。N700系は2.6キロメートル毎時毎秒だ。つまり、同じ最高速度を出せるとはいえ、700系は加速が鈍い。そうなると最高速度で走行できる距離が減り、所要時間は多くなる。これでは700系とN700Aを共通で運用できない。微妙な違いとはいえ、性能差がある車両が混在した場合に運行間隔を詰めるならば、速度の遅い700系に合わせる。
700系が引退するまで、N700Aはフルに性能を発揮できない。これが、現在、最高時速285キロメートル運転を早朝深夜と毎時1本に限る理由である。早朝深夜は運行間隔が空いているので、高速で走っても前の列車に追いつかない。毎時1本は、高速タイプの列車を走らせるために、その時間帯だけ前後の列車の運行間隔を調整した結果だ。
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