日本初の試み、新宇宙ビジネスカンファレンスに込めた思い:宇宙ビジネスの新潮流(4/4 ページ)
10月末、日本で初めて民間による新宇宙ビジネスイベントが開催された。筆者は発起人の一人として企画委員会代表を務めたわけだが、なぜ日本での開催にこだわったのか、その背景をお伝えしたい。
皆の熱き思いをクリスタライズする
具現化に向けて、何よりも大きかったのは、SPACETIDE 2015の企画をともに進め、運営を行ってきた企画委員会の同志だ。
今回筆者が代表を務めた企画委員会は、新たな民間宇宙ビジネスの発展に寄与したいという思いに賛同したメンバーから構成される。アクセルスペースの中村友哉氏、アストロスケールの岡田光信氏、チームハクトの袴田武史氏は日本を代表する宇宙起業家だ。グローバル・ブレインの青木英剛氏は宇宙業界出身の唯一のベンチャーキャピタリストであり、三井物産の藤原謙氏も宇宙分野の投資をリードしている。
西村あさひ法律事務所の水島淳氏、野村総合研究所の佐藤将史氏、電通の米澤香子氏もそれぞれの立場で民間宇宙ビジネスにかかわっており、東京大学大学院教授の中須賀真一氏、慶應義塾大学大学院准教授の白坂成功氏は研究者として、また内閣府宇宙政策委員会の委員や部会員として宇宙業界に長年貢献されてきた方々だ。これだけ多様なメンバーが思いを共有し、企画・運営を行い、走り続けてきた。
そして今回は内閣府宇宙戦略室との共同主催という機会に恵まれ、来場された島尻大臣からは「新たな宇宙産業の流れを作るためには、さまざまな人材が必要であり、内閣府としてもスペース・ニューエコノミー創造ネットワーク(通称S-NET)を立ち上げ融合を加速させたい」とのコメントもあった。まさに官民連携の取り組みだ。さらに、登壇いただいた宇宙起業家や著名投資家の方々も、宇宙ビジネスの新時代を切り開こうという思いを共有する方々だ。
SPACETIDE 2015は多くの方々の思いがクリスタライズ(結晶化)した、宇宙ビジネスの新時代を象徴する場であったのではないかと思う。10年後、あのとき、あの場所で、あの時間を共有できたことを皆さんと振り返ることができたら本望だ。次回コラムでは、当日の内容をお伝えしたいと思う。
著者プロフィール
石田 真康(MASAYASU ISHIDA)
A.T. カーニー株式会社 プリンシパル
ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、10年超のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。民間宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE 2015」企画委員会代表。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。主要メディアへの執筆のほか、講演・セミナー多数。
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