日本初の試み、新宇宙ビジネスカンファレンスに込めた思い:宇宙ビジネスの新潮流(3/4 ページ)
10月末、日本で初めて民間による新宇宙ビジネスイベントが開催された。筆者は発起人の一人として企画委員会代表を務めたわけだが、なぜ日本での開催にこだわったのか、その背景をお伝えしたい。
2015年にこだわった理由
一方、具現化にあたっては「今年(2015年)」というタイミングで行うこと、そして多様なバックグラウンドの方々が「一堂に会する」ということが重要な要素になるとSPACETIDE企画委員会メンバーで議論してきた。
まず、なぜ2015年にこだわったのか。政府は今年1月に新「宇宙基本計画」を発表し、その中で宇宙産業を将来的に官民合わせて5兆円産業にすることを目標とした。その方策の1つに「民生分野における宇宙利用推進」が掲げられたのである。一方で、大手メディアが宇宙産業を取り上げる回数も近年増えてきており、今年は日本の宇宙ベンチャーの資金調達ニュースも多く流れるなど、徐々に熱を帯び始めていることを感じていた。
そして、筆者は企画委員会メンバーとともに、今年7月にシリコンバレーの宇宙ビジネスカンファレンス「Newspace conference」に参加してきた(関連記事)。既に米国ではそうした宇宙ビジネスに関するイベントが10年近く続いていることに衝撃を受け、日本も後れを取るわけにはいかないという思いを強くした。こうした状況も踏まえて、何としてでも今年に開催することが重要と考えた。
SPACETIDEの具現化に向けたもう1つの要素、可能な限り多様なバックグラウンドの方々に集まっていただくことも重要だった。これまでの宇宙関連の会合というと、例えば、宇宙工学などの専門家や関連メーカー企業などが集まり、クローズドな場で行われることが多かった。しかし、新たな民間宇宙ビジネスの発展には、従来の宇宙産業を支えてきた方々に加えて、新たなプレイヤーの参入が重要だと感じていた。そして産業発展のためには起業家を中心に、エコシステム全体の形成が必須だ。
だからこそ今回、国内外の宇宙ベンチャーを中心に、投資家、エンジニア、研究者、メディア、デザイナー、学生、政府関係者など、将来の宇宙ビジネスにかかわる可能性のあるさまざまな方々に、イベントの登壇者、あるいは来場者として参加いただけるように働きかけた。実際来場者の60%が現在宇宙産業にかかわっていない方々であり、これは驚くべき数字だった。そして、世界の潮流は、やはり世界のトッププレイヤーに生の声で語ってもらうべきと考え、米XPRIZE foundationとその参戦チームにも登壇いただいた。
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