連載
トヨタは世界一への足固めを始めた:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)
フォルクスワーゲンがつまづいた今、トヨタが王座に立ち続けるのはほぼ間違いないだろう。しかし真の意味で世界一になるためにはやるべきことがある。
先例としてのマツダ
ここ数年、マツダはそういう部分を改善することに精力を注いで、クルマ好きの間ではマツダのそういう真面目な改善が高く評価されるようになりつつある。断っておくが、マツダのクルマが完璧であるとか、ベストであるとか言うつもりはない。ただ開発において「こういう理由でここをこのように改善しました」という説明がきちんと筋道立っており、共感できるということだ。そして、その改善が運転してある程度体感できることが高評価に繋がっているわけだ。
例えば、アテンザとCX-5はマイナーチェンジでショックアブソーバーのセッティングを変え、振動をより遮断する方向へシフトした。設計者はそうしようと思ってそうした。筆者個人の感覚で言えば、タイヤからの情報も伝わりにくくなったので、必ずしも高評価ではないのだが、マツダがそれを狙ってカイゼンし、その結果、そういうものが出来上がったという筋道は理解できる。真面目だというのはそういうことなのだ。付け加えれば、マツダの主査は筆者の指摘に対して「そういう異論は大いに結構です。評価は人それぞれですから」と答えた。少なくとも事実認識のレベルではきちんと共感があり、その事実に対する評価の違いという相互理解が得られたことになる。
TNGAによってトヨタもまた、そういうクルマ作りに舵を切るのだと宣言した。これまでのトヨタとのギャップを考えると、本当にできるのかという疑念はあるが、筆者は、その宣言そのものは素晴らしいと思い、応援したいと思っている。
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