シリア難民問題から感じる「メディア」への違和感:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のトップが来日した。フランス同時テロ後だったので、日本のメディアはこぞって取り上げたが、筆者の山田氏は一連の報道に違和感を覚えたという。なぜなら……。
AP通信のほうがバランスの取れた記事
日本は、金銭的支援額で世界トップクラスだ。UNHCRによれば、日本の支援額は2013年、約2億5000万ドル(308億円)に上り、世界第2位(参照リンク)。しかも日本は、政府からの支援以外に、UNHCRの日本協力団体であるNPO団体、国連UNHCR協会を通した民間支援も行っており、この額が約1870万ドル(23億円)になる。民間だけの支援でも、国別ランキングに当てはめると17位に位置する額になる。
日本政府よりも上で、毎年1位を突っ走っているのは米国である。ちなみにその額は、2位の日本より4倍も多く、10億ドル(1231億円)を超える。米国はこれまで、シリア内戦が始まった2011年から2000人のシリア難民しか受け入れてこなかったが、状況悪化を受けて今後2年で1万人の受け入れを表明した。だがフランス同時テロを受けて、保守層を中心にシリア難民の受け入れに慎重になっており、現在受け入れに反対しているのは31州に上っている。
では今回シリアなどから難民が押し寄せている欧州はどれほどの金銭的支援を行なっているのか。例えば、大勢の移民受け入れを表明したドイツは日本の半額ほどで1億1000万ドル(135億円)ほど。英国は約1億6000万ドル(197億円)で、フランスは約2400万ドル(30億円)、ロシアは1200万ドル(15億円)だ。シリア内戦に密かに深く関与しているアラブ諸国なのに、難民を受け入れないと非難されているアラブ諸国も金銭的支援は行っている。サウジアラビアは約1150万ドル(14億円)、クウェートは約1億1200万ドル(138億円)である。
ちなみに、日本を超えて世界第2位の経済になった中国は約140万ドル(1億7000万円)で、ランクングで見ると世界で29位。お隣の韓国は約590万ドル(7億2000万円)で24位だった。
こうした背景を踏まえ、先ほど触れた米AP通信は、「日本は人道支援では主要な拠出国であるが、毎年受け入れる難民数は非常に少ない」という書き方を短い記事の中でしている。日本のメディアではこうした支援について言及しているところはほぼなく、これを見てもAP通信のほうがバランスの取れた記事であると分かるだろう。
1つはっきりさせておきたいのは、日本のメディアを頭ごなしに否定しているわけではないことだ。ただもう少しバランスを意識するべきではないだろうか。それが長い目で見るとメディアへの信頼につながる気がしてならない。
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