寒い冬に、なぜコンビニは駐車場に水をまくの?:コンビニ探偵! 調査報告書(3/3 ページ)
年中無休のコンビニにとって、年末年始は特に目まぐるしく商売が変化する。普段なら到底ありえないような事件が起きるのも、年末年始という特別な時期なのだ。
面倒くさく、酒臭い
そして、年末年始の時期に最も厄介なのが酔ったお客さんだ。ひと昔前は、終電間際の電車に乗ろうものなら、すべての乗客が「飲んでいる」と思うほど、車内はアルコール臭かったものだ。「おっ、ここは空いてるなあ」と不用意に乗り込むと、実は「大惨事」なんてこともザラだった。
最近は、遅い時間に電車に乗っても、あまり酔っぱらいを見かけなくなったように感じる。以前に比べれば、乱暴な酒の飲み方をする人が減ったのだろう。その反動からなのか、大みそかから正月の三が日にかけては「飲む」量が増えるようだ。
「あら。元旦から開いてるのねえ、助かるわあ」と、いまさらのように声をかけてくる酔っぱらいもいれば、駐車場で寝てしまう酔っぱらいもいた。
筆者の経験で困ったのは、やたらと話の長い酔っぱらいだ。全く興味のない駅伝の話を延々と聞かされつつも、他のお客さんの対応もしなければならず、むこうが“ゴキゲン”なだけに対処に困った。
とはいえ、ほとんどがちょっと面倒くさくて酒臭い酔っぱらいだが、やっかいなのはケンカだ。店内で奇声を発し、ロレツの回らない相手を接客するのは難儀である。時には、警察や救急車の出動要請に至る事例もある。
平成25年の警察庁の統計によると、警視庁管内での泥酔者の保護は、1万3000人を超えている。読者のみなさんも、正月早々恥ずかしい思いをしないように用心したいところだ。
「ウチの店に限って……」という考えが危ない
そして、年末年始にコンビニ経営者が最も心配する事件といえば、コンビニ強盗だろう。平成25年犯罪情勢によると、平成25年のコンビニ強盗発生件数は590件である。
上の表を見ると分かるとおり、強盗と呼ばれる犯罪の17.7%がコンビニ強盗である。平均すると、毎日1.5件以上のコンビニ強盗が発生しているという計算になる。「ウチの店には来ないだろう」という思い込みは危険である。
かと言って、即効性のある防止策があるわけではない。被害金額の減少と検挙率アップの2本立てで、コンビニ強盗側のリスクを上げていくしか現状を脱する方法はないだろう。
年末年始は誰もが何かと忙しいものだが、コンビニ経営者にとっても大変な時期だ。しかし、楽しい冬休みでもある。無事に新年を迎えられるようにしたいものだ。
著者プロフィール・川乃もりや:
元コンビニ本部社員、元コンビニオーナーという異色の経歴を持つ。「タフじゃなければコンビニ経営はできない。優しくなければコンビニを経営する資格がない」を目の当たりにしてきた筆者が次に選んだ道は、他では見られないコンビニの表裏を書くこと。記事を書きながら、コンビニに関するコンサルティングをやっています。「コンビニ手稿」
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