自治体のキャッチコピーは、なぜ“メルヘン化”してしまうのか:こだわりバカ(1/5 ページ)
自治体のキャッチコピーといえば、あってもなくても同じ空気のような存在の言葉ばかり。筆者の川上氏は、自治体のコピーは空気化し、メルヘン化するケースがあるという。その理由は……。
この連載コラムでは「飲食食品業界」「大学広告業界」における空気コピー(あってもなくても同じ空気のような存在の言葉)について取り上げてきた。多くの読者は、きっと次はアレを取り上げるんじゃないかと思っているのではないだろうか? そう、マンションの広告だ。
数年前に「羨望」「憧憬」「誇り」「静寂」「邸宅」「きらめき」「潤い」「緑あふれる」などの言葉が散りばめられたマンション広告の大げさなキャッチコピーが「マンションポエム」として脚光を浴びたことがある。
「マンションポエム」とはうまく言ったものだが、この連載では取り上げない。なぜなら、それは厳密には空気コピーとは呼べないからだ。私自身も現時点ではそれを上回る効果のあるコピーを書く自信がない。
確かにマンションの広告はポエム化しているかもしれないけれど、それなりに必然性があるのではと考える。マンションは多くの人にとって一生に1度か2度の大きな買い物だ。それでいて建物自体の価値は素人には分からないしほとんど差別化できない。
では何に対してそれだけのお金を払わせることができるのか? それはマンションが建つ土地だ。正確にはその土地が持っている「スペック」と「物語」だ。
当たり前だけど、すべのマンションの立地がハイスペックではないし、物語に溢れているいるわけでもない。そうなると土地に関する情報を多少盛る必要があり、それが高じるとポエム化してしまう。でもそれはそれで一定の役割を果たしているように思う。今のところそれに変わる案を提示できない気がする(マンション広告の仕事が来たことないから真剣に考えたことはないんだけど)。だからこの連載でマンションのキャッチコピーは取り上げない。
では今回は何を取り上げるのか? それは自治体が掲げているキャッチコピーたちだ。
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