自治体のキャッチコピーは、なぜ“メルヘン化”してしまうのか:こだわりバカ(2/5 ページ)
自治体のキャッチコピーといえば、あってもなくても同じ空気のような存在の言葉ばかり。筆者の川上氏は、自治体のコピーは空気化し、メルヘン化するケースがあるという。その理由は……。
海・緑・太陽が溢れすぎるキャッチコピーたち
自治体のキャッチコピーといえば、香川県の「うどん県」や広島県の「おしい!広島県」などを思い出す。どちらのキャッペーンもかなり話題になり観光プロモーションとしては成功したと言ってもいいだろう(お金もそれなりにかかってますが)。
またオフィシャルなキャッチコピーではないが、2012年、全国でスターバックスがないのが鳥取県だけになってしまったとき、知事が言った「鳥取はスタバはないけど、日本一のスナバがある」という秀逸なフレーズは、のちのちまでも鳥取県にものすごい経済効果をもたらした。
しかし多くの自治体のキャッチコピーは、空気コピーのオンパレードだ。自治体空気コピーの代表的な単語は「ふれあい」「やすらぎ」「ぬくもり」「やさしい」「きらめく」「いきいき」「わくわく」「つどう」「育む」「あふれる」「水」「緑」「海」「里」などのワードだ。これらにその自治体の名物があればそれを乗っければ(なければそれらを組み合わせただけで)、だいたいできあがりだ。
もちろん数多くある自治体のキャッチコピーの中には、よくできたものもある。ただ大半は似たような空気コピーになってしまっているのが実態だろう。
中でも沖縄県は、それぞれの自治体のキャッチコピーが区別するのが難しいほど似てきてしまっているという。調べてみたら本当にそうだった。
「海と緑と光あふれる南城市」南城市
「太陽と海と緑−観光文化の町」本部町
「水と緑と太陽の里・宜野座村」宜野座村
「青と緑の躍動する村」恩納村
「森と水とやすらぎの里“くにがみ”」国頭村
「太陽と緑のまち よなばる」与那原町
「太陽とみどりにあふれた国際性ゆたかな文化都市浦添市」浦添市
「ひかりとみどりといのりのまち」糸満市
「ひと・そら・みどりがつなぐ 響(とよ)むまち とみぐすく」豊見城市
海・緑・太陽が溢れすぎていてどこがどこだか分からない。まあ、それだけ、沖縄はどの自治体も海や緑や太陽に恵まれている天国のような場所だってことかもしれないけど。
これらは税金の無駄遣いとは思うけど、まあ人畜無害ではある。お役所仕事だから仕方ないので放置しておいてもいい。今回の本題はここからだ。空気ならまだいいのだが、何とかしてほしいのは、顔を赤らめてしまうような自治体のメルヘンコピーだ。
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