自治体のキャッチコピーは、なぜ“メルヘン化”してしまうのか:こだわりバカ(3/5 ページ)
自治体のキャッチコピーといえば、あってもなくても同じ空気のような存在の言葉ばかり。筆者の川上氏は、自治体のコピーは空気化し、メルヘン化するケースがあるという。その理由は……。
とっても恥ずかしい自治体メルヘンコピー
メルヘンコピーとはどういったものか? 例えば私は、神奈川県藤沢市に住んでいる。藤沢市は鎌倉市と茅ヶ崎市にはさまれた江ノ島があるいわゆる湘南の中心部にある人口40万あまりの都市だ。2014年末、藤沢市の新しいキャッチコピーが発表された。それが……
“キュン”とするまち。藤沢
というものだった。これはかなりメルヘン度が高い。“キュン”って。私は、そのキャッチコピーを見て、思わず藤沢市に住んでいるのが恥ずかしくて「キュン死(死語?)」しそうになったくらいだ(人様が決めたり書いたりするのを批判するのはよくないとは分かっていつつも、自分の住んでいる街だから正直な意見を言わせてもらった。関係者の皆さん、ゴメンナサイ)。
このようなメルヘンコピーは、全国の自治体で散見されるが、調査したところ、北海道の自治体にずば抜けて多いことが判明した。以下、いくつかの例をあげてみる。
「まんまるはーと 月形町」 (月形町)
「いきいきと里住夢(リズム)あふれるまち遠別町」(遠別町)
「ポテト夢タウン・あっさぶ」(厚沢部町)
「心と心をつなぐハートコミュニケーションはぼろ」(羽幌町)
「やさしさと躍動のふれ愛タウンとよころ」(豊頃町)
「きらめく海・駒ヶ岳(やま)・うるおいの湯郷(ユートピア)」(鹿部町)
「萌える海と大地さわやか交流郷」(標津町)
「夢いっぱい 北の大地(まち)・びふか」(美深町)
「星・雪・きらめき 緑の里なよろ」(名寄市)
「もっと せいかつ う〜んと しあわせ」(妹背牛町)
うーん、確かにメルヘン度が高い。漢字にキラキラネーム的なルビがふられているのが多いのも特徴だ。そして地名はひらがなにするのもお約束だ。最後の妹背牛(もせうし)町のキャッチコピーは、各文節の冒頭の単語をむすぶと、「も・せ・う・し」となるらしい。きゃ――。妹背牛町、行ったことないけど、きっととても素敵な町だと思う。おそらく。たぶん。でも……。
関連記事
- なぜ大学のポスターは「世界にはばたき」「未来を拓く」ばかりなのか
「ここに集い、世界に旅立つ」「ともに学び、探求し、共に世界を切り拓く大学」――。大学のスローガンは、なぜ手垢がついた表現ばかりなのか。自称「大学コピーコレクター」の川上徹也氏が分析したところ……。 - 「こだわりの○○」という言葉を使う店は、何もこだわっていない(絶対に)
街中に「こだわり」という言葉があふれている。「こだわりラーメン」「こだわり旅行」「こだわり葬儀」など。このようなこだわりのない使われ方に、コピーライターの川上徹也氏が燃えている。こだわりの原稿を読んでみたところ……。 - “納豆不毛地帯”の大阪で、なぜ小さな店の納豆がヒットしたのか
「関西人は納豆が嫌い」と言われている中で、大阪の東部にある大東市で注目されている納豆メーカーがある。その名は「小金屋食品」。従業員数が10人も満たない小さな会社が、なぜウケているのだろうか。 - 最初は売れなかった? これまで語られなかった「じゃがりこ」の裏話
「じゃがりこ」といえば、カリカリ・サクサクした独特の食感が特徴だ。カルビーが1995年に発売して以来、ロングセラー商品となっているが、開発秘話はあまり知られていない。開発に携わった担当者が多くを語らなかったからだが、18年経った今、当時の裏話を打ち明けてくれた。 - ジャポニカ学習帳の表紙から「昆虫」が消えた、本当の理由
ジャポニカ学習帳の表紙といえば、「昆虫」の写真を思い浮かべる人も多いだろうが、数年前に昆虫が消えた。教師や保護者から「昆虫が気持ち悪いから変えてほしい」といった要望があって、発売元のショウワノートが削除したというが、本当にそうなのか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.