連載
アディダスを抜いた? なぜ新参者の「アンダーアーマー」が老舗をおびやかすのか:消費トレンドから見る企業戦略の読み解き方(7/7 ページ)
ナイキやアディダスといった有名スポーツ用品ブランドの牙城を崩そうとしているのが、創業わずか19年のアンダーアーマーだ。急成長の理由を3つのポイントで分析してみたい。
強みのウェア市場は、まだまだ成長が続くと考えられる。国内でアンダーアーマーというブランド名を見聞きする機会は増えつつあるが、先行ブランドと比べれば依然として認知度が低く、顧客層の拡大余地はまだまだ大きいと考えられる。
さらに同社は次なる成長を目指し、シューズ(フットウェア事業)など商品領域の拡大にも注力している。
ただし、懸念材料がないわけではない。
トップアスリート戦略や機能面の追及で、スポーツ領域での優位性は維持していくと考えられるが、近年では、デスクワーク向けに開発された「PCスーツ」(デサント)など、コンプレッションウェアの活躍の場が日常にまで広がりつつある。スポーツ用品メーカーだけでなく、アパレル業界なども交えたコンプレッションウェア競争が激化すると、今の優位な立場に影響が出てくる可能性も考えられる。
商品カテゴリーの拡大とともに、競技者が運動時も運動以外の時も常に寄り添えるように、既存のスポーツ領域から日常シーンに進出していくこと。こうした点が、同社の今後の成長を大きく左右するポイントとなるだろう。
アンダーアーマーと日本総代理店を務めるドームは、「ドームいわきベース」(福島県いわき市)を拠点に、イベントや施設管理など新たなスポーツビジネスに取り組む準備を始めているとも言われている。こうした新規事業はどのように生活者に捉えられ、スポーツ市場の活性化につながるのか。今後の動きに注目したい。
関連記事
- “ロボット大国”日本は、なぜ「手術支援ロボット」市場で勝てないのか
ロボット大国とも言われる日本だが、明らかに米国企業の独占を許してしまっているのが「手術支援ロボット市場」だ。2けた成長中の有望市場にもかかわらず、なぜ日本のメーカーは存在感を示せないのか。そのカギは日本人特有の“ある性質”にあるかもしれない。 - なぜ今“昭和型”コーヒーチェーンが増えているのか
コンビニコーヒーなどに押されて苦戦を強いられてきた「喫茶店市場」。しかし、ここ数年でV字回復の兆しを見せているのをご存じだろうか。そのけん引役になっているのは、西海岸風のオシャレな1杯……ではなく、日本の昔ながらの“昭和型”喫茶店だ。 - YKKのファスナーが、他社に追随されない理由
洋服やカバンのファスナーを手にしたとき、「YKK」というロゴを見たことがある人も多いのでは。YKKファスナーの世界シェアは45%とも言われていますが、なぜそんなに数値を維持できるのでしょうか。その理由は……。 - なぜ巨人の原監督は“プラス思考”でいられるのか
なんだかんだと言われながら、やっぱり今年の巨人は強い。常勝軍団の指揮官を務める原監督は、各方面から叩かれてきたが、なぜ“プラス思考”でいられるのか。その理由は……。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.