東向島珈琲店に地元の人が引き寄せられる理由:人と人、人と街をつなぐカフェ(2/4 ページ)
東京スカイツリーからほど近く、地元・墨田区界隈で暮らす人たちや企業をつなぐ拠点として有名なカフェがある。この店を起点に地域活性化に対するさまざまな取り組みが行われている。
試行錯誤を重ねたレアチーズは、さわやかな風味とふんわり優しい食感で人気が高い。乳白色に彩りを添える季節のフルーツソースもカウンターの中で手作りされており、2012年に墨田区の「すみだ地域ブランド推進協議会」が認定する「すみだモダン」ブランド認証(関連リンク)を獲得した。
2013年には「抹茶のリオレ」が同認証を取得。これは地元の事業者たちとジャンルを超えて連携したいという井奈波さんの思いから生まれたお米のスイーツで、食材はもとより器やカトラリーにいたるまですべて墨田区の職人魂が結集して一皿を作り上げている。
材料のお米は創業100年を超える老舗米店、隅田屋商店がリオレのためにブレンド。チタン製のスプーンは、下町の町工場が力を合わせた深海探査艇「江戸っ子1号」開発への参加など、異業種連携事業に積極的な浜野製作所が担当。スプーンとぴったり合う形にくぼみをつけた美しいガラスの器は硝子企画舎が携わる。ものづくりの伝統が息づく街の魅力を知らしめるメイド・イン・スミダのスイーツである。
井奈波さんがコーヒーを淹れるカウンター。その前に並ぶ3客の椅子が人と人のつながりの舞台だ。井奈波さんが触媒となってお客同士の「良いところ、得意なこと」を紹介すると、引き合わされた人々の間に化学反応が起きて新しい仕事やイベントの計画が動き始める。
「ここはきっかけづくりの場です」
井奈波さんはそう語る。きっかけさえ生まれれば、あとは当事者たちが協力し合って計画を育てていけばいい。隅田川そばの牛嶋神社で開催される手づくりマルシェ「すみだ川ものコト市」のメンバーや、コミュニティー型クリエイター集団「すみだクリエイターズクラブ」面々も東向島珈琲店の常連客だ。
最高の触媒となるにはどんな資質がふさわしいのだろうか。
関連記事
- 変わりゆく品川に息づく、カフェの温もり
「この街を活気付けたい」――。かつて宿場町として栄えた北品川の商店街で人々を迎えているカフェ。「クロモンカフェ」と「KAIDO books & coffee」のオーナーたちの思いを紹介したい。 - ブルーボトルコーヒー創業者が語る、日本進出が必須だった理由
オープン以来、連日盛況なBlue Bottle Coffeeの日本第1号店。なぜこのタイミングで日本に出店したのか。創業者のジェームス・フリーマンCEOに聞いた。 - ブルーボトルコーヒーが大切にする3つのこと
米Blue Bottle Coffeeの創業者であるジェームス・フリーマンCEOのインタビュー後編。企業理念やブランドなどについて語った。 - シアトルで、スターバックス1号店に行ってきた
世界中で2万2000以上も店舗展開するスターバックス。「シアトル系」の名の通り発祥の地はシアトルです。1971年にオープンした1号店が今も健在と聞いて、どんなところなのかコーヒーを飲みに行ってみました。 - なぜ今“昭和型”コーヒーチェーンが増えているのか
コンビニコーヒーなどに押されて苦戦を強いられてきた「喫茶店市場」。しかし、ここ数年でV字回復の兆しを見せているのをご存じだろうか。そのけん引役になっているのは、西海岸風のオシャレな1杯……ではなく、日本の昔ながらの“昭和型”喫茶店だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.